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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場「アラジン」:オリエンタルのごった煮

千夜一夜物語」で一番有名であろう「アラジンと魔法のランプ」。
どうもこの主人公のアラジンは、欧州では中国人なのだとか。
プログラムによると、「アラジン」は「くるみ割り人形」と並んでクリスマスで上演される人気芝居の一つで、中国人の格好をして出てくるという。
つまり欧州の子供たちは中国人のアラジンに何の抵抗もない…らしいです。

でも日本だとどうでしょう。
ディズニーの映画を見なくとも、私が子供の頃に読んだ絵本では、確かアラジンは思いっきりアラビア人の格好をしていたと思ったのですが…。

そんなわけで、英国人、デビット・ビントレー振付の新作「アラジン」は、やはり主人公のアラジンはしっかり中国人の格好をして登場します。
中国人のアラジンがイスラム風の方々が闊歩する市場で大騒ぎしているわけですね。
もうその段階で我々日本人的には違和感バリバリなのですが、サッカーの予選を見てもわかるとおり、欧州人は中東から日本までひっくるめて「アジア」という大雑把な概念でいらっしゃるわけです。
中東世界に中国獅子舞は出るわ、ドラゴンダンスだか長崎くんちだかが出てくるわで、まあ、にぎやかなこと。
中東テイストと中国テイストがごった煮だろうがなんだろうが、「アジアだからいいだろう」ってなもんでしょうか。
そりゃあもちろん「海賊」にしても「バヤデール」にしても、ボリショイの「ファラオの娘」にしたってイスラム世界やエジプトを舞台にチュチュで踊っているわけですから、何でもありと言えばありですが、19世紀の古典ですからね、これらは。

「アラジン」は一応21世紀の新作でございます。

というわけで。
「アラジン」自体は主人公は元気な男の子。
やんちゃ坊主の逆玉冒険譚です。
主役・アラジンのファーストキャストが新国の山本さん。
セカンドにKバレエから来た芳賀さん、そして3人目が今回初主演という八幡君。

私が見たのは小野・八幡のなんと両名とも今回が初主役というフレッシュペア。
初作品で初主演ペアという、初物尽くしでありました。

八幡君、身長165cm!?
小さい!
豆粒のように元気なアラジンで、それはそれでいいのですが、いやぁリフトがキビシイわ。
トゥで立つと姫の方がでかいですよ。
あまり肉体的なことは言いたくないけれど、でもそれもバレエの世界の要素であるし…厳しい世界です(T_T)

ストーリー的には1幕の宝石のディベルティスマンが素敵でした。
予備知識なくとも真珠、オニキス、ルビー、サファイア、エメラルドはわかりますね。
ダイヤモンドが固い鉱物らしい、でも優雅な踊りで、回転するたびに澄み切った音が聞こえてきそう。
相当に良かったです。

ですから2幕、3幕とだんだん群衆も減り、しょぼくなっていったような感はぬぐえないのですが、でも青魔人・ジンがなかなか威厳があってそれはステキ。
大塚明夫さんのシブいお声が聞こえてきそうでした。
その大塚ボイス(脳内変換)で威厳と誠実さに溢れたジンが、悪い魔法使いに呼び出されると、途端悪人のような雰囲気を漲らせてアラジンに襲い掛かってくるあたりはなかなか面白い。
ご主人様次第で良くも悪くもなるというキャラがしっかり出ていて、なるほどと感心しました。

結局のところ、なんだかまだまだいろいろ改定の余地はありそうです。
でも少なくとも昨年だったかの秋の新作「椿姫」よりは格段に良かったですね。
はっきり言って寝ましたもの、「椿姫」は。
起きていられなかったと言いますか。
男の子主人公の話は好きですし、ブラッシュアップすればもっと面白いものになりそうです、アジアのごった煮を気にせずともいいくらいに。