arT’vel -Review- : art × Travel/旅×アート レビュー

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

コート・ダ・ジュール2010(2):ピカソもルノワールも幸せいっぱい

今日はすっかり晴れ上がり、風さえなければとっても暑いくらいの陽射しです。
プロバンスのミストレルとは違いますが、やはり地中海付近の春先は風がちょい強めで、そのせいで寒く感じます。

でもやっぱり風景が美しい!
青い地中海と、ローヌ・アルプの雪をかぶった山々が望める太陽に満ちた町なんてそうないですね。

特に冠雪の風景は春ならではだそうで、夏になると雪はなくなってしまうのだそうです。
このローヌ・アルプの冠雪が殊に美しいので、ぜひ一度春に訪れてみてください。

で、今日は絵画の話。
コート・ダ・ジュールの観光テーマの1つが絵画、というか画家です。
代表的なところでピカソルノワールペイネシャガールが挙げられますか。
今日訪れたのはアンティーブのピカソ美術館とカーニュ・シュル・メールのルノワール美術館でした。

キュビズムピカソ印象派の雄・ルノワールの、この二人の共通点はコート・ダ・ジュールに新居を構え、充実して幸せな生活なり余生を送ったということです。

アンティーブのピカソ美術館には彼が結婚してアンティーブで暮らしていた時代の絵や写真、デッサンやセラミックが展示されています。

ゲルニカ』とかハードな作品の印象が強いピカソですが、このアンティーブ時代の絵はまるで子供のお絵描きのように幸せいっぱい。
この時代の彼のテーマの一つがフクロウでありフォーン(ヤギの格好をした、いわゆるタムナスさん)なのですが、どれも楽しそうに笑っているんですね。
海辺でフォーンが踊る絵があるのですが、強烈なコート・ダ・ジュールの太陽も、より強烈な光と影の国・スペイン生まれのピカソにとってはパステルカラー。
とってもシンプルな絵なのに、いや、シンプルゆえに彼がいかにこの地で幸せに満ちた創作活動をしていたかというのが窺えて微笑ましくなります。

またこの時代、スペイン絵画によくある静物画を、ピカソなりに描いたものもたくさんあり、この太陽溢れる、(ピカソにとっては)穏やかな気候の町で、己を見つめなおすきっかけになったのかなぁと思います。

またカーニュ・シュル・メールにあるルノワール美術館は、ルノワールがカーニュで購入した館をそのまま美術館にしたものです。

11点ほどのオリジナル作品があり、風景画については描かれた場所がそのまま残されています。
最初は農業小屋だけだったところ、奥さんのたっての希望ででかい家を建てたのだとか。
アトリエや車椅子、野外作業時に使った椅子なんかも残っています。
館にはルノワールを慕って集まってきた友人が居着いた部屋もあり、梅原龍三郎の展示もありました。

パリのせわしい生活を離れ、オリーブやオレンジ、竹林などを植えた広大な庭と家族と友人と、望んだ家を手に入れ、好きなものに囲まれて創作にいそしんだという様子が窺え、こちらもなかなか幸せムードに溢れています。

やっぱり海と山と太陽と美味しいものに囲まれた土地は人を幸せにするのかも。
画家が集まるべくして集まった地なんだと思わせられます。
苦難を経て手にした幸せな生活から生まれるアートは見る人をも幸せにするもんです。