arTravel: art × Travel/旅×アート

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国バレエ「ロメオとジュリエット」:無駄な死を積み上げた果て

新国立劇場バレエ団「ロメオとジュリエット」行ってきました。
ロメジュリもといロミジュリのキャストは小野絢子さんとデニス・マトヴィエンコ。
ちょっと仕事モードがにわかサラリーマンのようになってて、さらに3週連続で休日出勤が続いてストレス気味だったものですから、今回平日休みをもらって参戦しましたが。
本当に行ってよかった!
見られてよかった…!

もうとにかくまずは小野さんの素晴らしい演技力に感動でした。
彼女の踊りは「くるみ割り」とか、何回か見ているはずなんだけど、こんなに素晴らしいとは気づかなかったというか思わなかったというか。
すいません、私が不勉強だったか…。
小野さんはこのほどプリンシパルに昇格したそうですから、ここへ来て実力が鮮やかに開花してきたのでしょうか。

乳母にまとわりつき、結婚よりもお人形で遊ぶほうが好きだった、ほんとに少女のジュリエットがロメオと出会い、恋を知り、一人の女性もとい人間として、まっすぐ激しく自身の想いを貫き通して生き抜いた姿が、本当に胸を打ちます。
鮮烈な、一瞬の、でも永遠の閃光のようなジュリエット…素晴らしいです。
マクミランのロミジュリは何度も見ていますが、これほどまた新鮮に、新たに感動を呼び起こしてくれた小野さんの力量に、ただただ感服しました。

1幕からロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオのやんちゃ坊主3人組の掛け合いに、ティボルトも交わってのチャンバラ。
モンタギューVSキャピュレットの争いに介した大公が積み上げる死体の山が衝撃的です。
ホントに人間を積みあげるから、インパクトが半端じゃない。
本当に、「無駄な死」です。

そしてこの話はその「無駄な死」の積み重ねによる悲劇なのだと、改めて気づかされるのです。

「無駄な死」の積み重ねを憂いたロレンス神父は、ロミジュリ二人に両家和解の希望を託して、二人を結婚させますが。

しかし続くマキューシオVSティボルトの、マキューシオの「無駄な死」。
そして友人の死に逆上したロミオVSティボルトの、今度はティボルトの「無駄な死」。

ロミオが追放され、婚約者パリスとの結婚をガンと拒むジュリエットの、この意志の強さ。
ここ、パリスも演者・演出によっては「私はいつまでも待ちます」的な、ちょっと気の毒な男になるんですが、今回のパリスはジュリエットに拒まれ「話が違うじゃないか」と父ちゃんに詰め寄るパリス。
ホントにジュリエットが好きなのか、名声が好きなのか、と思わせられるパリスで、ロミオと対照的なところがより、ストーリーに深みを持たせてくれます。

そして仮死となる薬を飲むジュリエット。
「仮死」なのですよね、あくまでも。
純粋な想いと、自身を貫くためのものであり、ゆえに「仮死」であり「死」ではないのです。

でも結局ロレンス神父の手紙はロミオには届かず、ロミオの服毒による「死」は、ティボルトを殺し、墓場で悲しみにくれるパリスをも殺める「無駄な死」の報いであり、連鎖のようです。

「仮死」だったジュリエットも、自身の真実を貫くためには、もはやその「無駄な死」の連鎖に加わるしかなかった…。
ジュリエットの健気さ、一途さ、純粋さが鮮烈なだけに、「無駄な死」が一層愚かしく、虚しく感じられます。

…とまあ、これだけのことを考えさせ、感じさせてくれた小野さんはじめ、マトヴィエンコやマキューシオの八幡君、ベンヴォーリオの芳賀君、そして眼力で人を殺めそうなティボルトを演じたマイレン、新国の皆様。
本当に見応えのある舞台でした。

新国、やっぱりビントレー氏を迎えて、すごく飛躍した気がします。
秋の新作「パゴダの王子」も主演は小野さん。
これは必見だ!