arT’vel -Review- : art × Travel/旅×アート レビュー

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ「シンデレラ」:デフォルトと萌え系少女漫画

新国立劇場バレエ、12月15日の小野&福岡組、16日の米沢&厚地組のシンデレラを見てきました。
どちらもそれぞれに味わいがあって、非常に楽しい、また美しい舞台でした。

総じてやっぱり新国バレエはクオリティ高いです。
コールドはマリインスキーに遜色ない美しさだし、舞台は上品で華麗。
また脇を固める出演者たちの、合間合間の小芝居が舞台を邪魔するでなく、でもいいスパイスを与えてて、見るところがすごく多く、結果、舞台としてとても密度の濃い時間を過ごさせてもらえる。
もっと世界に誇っていいですし、日本人がまず、このすごさを誇りに思うくらいになっていい。
それくらいの質の高いバレエ団に成長したと思います。

●15日小野&福岡組

ファーストキャストの小野&福岡組は、ある意味今の新国バレエのデフォルトとでもいいましょうか。
来年2月にバーミンガム・ロイヤル・バレエにアラジンの客演が決まったペア。
いよいよ世界デビューですね!

小野さんはマノンやシルヴィアのような難役を踊りこなしてきただけあって、久々の古典系は貫禄の一言。
大和撫子的イメージの彼女は、でも翌日の米沢さんもそうなんですが、不幸を身に纏ったシンデラ、ではない。
困った姉ズとお父ちゃんの間に挟まれた現実のなかで立ち回り、自分のポジションで立ち回りつも、お父ちゃんと二人っきりになったら、素直に泣いて自分を主張する女の子。
雑巾けしつつも、頭の上に「怒」マークが出てる感じが、とってもかわいいシンデレラです。

舞踏会に現れた場面なんかはもう、ここぞとばかりにキラキラで、これは福岡王子だって目が眩わ。
実際福岡王子、もう一目でフォーリンラヴしちゃいましたー、という感じで、ヴァリエーションを踊る姿を見つめる姿がメロメロって感じがよく出てました。
福岡君、この日の王子はやはり福岡的体育会系RPG戦士王子。
演技やオーラの部分で「これぞ福岡っ!」ていうインパクトがもっと出ると、もっとよくなる感じがするんですけど。

また今回のサプライズは、やはり義理の姉ズの姉役が、まさかの山本さん。
いやぁ、山本さんがこういう役をやるとは、受けるとは思っていなかっただけに、すごく驚きまた。
長身の山本さんゆえ、舞台の存在感はでかい。
迫力ありすぎ(笑)
三幕、王子を巻き込んで笑いを取るところはさすがです。
山本シスターが片割れの若手クンを終始リードする感じがまたほほえましかったですね。
世代交代の感がありつつも、今後のダンサーはこういう役もいろいろこなせてこそ、とも思う。
なんせシンデレラの姉役は振り付けたアシュトンやビントレー監督も演じたとか。
なんか山本姉を見ながら、パリ・オペで義理母を演じたジョゼ・マルティネスを思い出しました。
彼も素敵な笑える義理母だったなぁ。

この日の仙女役はさすがの湯川さん。
特に好演だったのは春の精の五月女さんでした。
秋の精に長田さんがいる辺りが、また豪華というか。
気になったのは、本来道化役の八幡君が、どうもダンス教師を、福田君が道化をやっていたような…??
アラジンでバーミンガムに行くのは八幡君だとばかり思っていたので、ひょっとしたら怪我とか、なにかあったのでしょうか?
心配です。

●16日:米沢&厚地組

さて、米沢シンデレラ。
予想はしていましたが、反則的なかわいらしさです、唯デレラ(笑)
萌え系なんだわ、彼女は、やっぱり。
涙はすれども、めちゃめちゃポジティブなシンデレラで、ある意味すごくイマドキというのか。
箒とじゃれるように踊る姿もいちいちかわいくて、もう萌えー!とか心の中で絶叫しまくりでした。

さらにそこに長身イケメンの厚地王子が加わるわけですからもう、萌え度MAX!
小柄な唯タソに長身厚地王子は、なんかもうそのまま少女漫画のカップルのようです。
いやこれ、おいしすぎ(笑)
悶絶ものでした。

また米沢シンデレラは相変わらず、涼しい顔して難しい振りをさらりとこなすし、厚地さんも華がありジャンプも高く、キレがある。
米沢シンデレラが去った後のがっくりっぷりは、思わず「そんなに落ち込むな」と肩たたきたくなるほどでした。

この日の義理姉ズの片割れはターザン古川さん。
古川さん、衣装を着るとそうではないものの、「シルヴィア」で中身(笑)のごつさを思いっ切り見せていただいているだけに、先日のすらりとした山本シスターズとは違う味わい。
大股でドカドカ歩くところなんかパワフルで、古川さんらしい。
さらに下着姿になったときに、やっぱり「ターザンだ!」と思ったりするわけですが、そのとき「コルセット痒い~」という振りをしてくれる辺りがツボ。
いろいろ観察して研究しているんでしょうか。

またやはりこの日のバレエ教師も八幡君。
15日と同じ顔だし、1幕ではお父ちゃんに、3幕では王子にギャラをおねだりする小芝居が同じなので、多分間違いないだろうな。
なんか故障…というか、不調があるのでしょうか。
いつもなら退場時に一発ぽーんと跳びそうな八幡君ですが、おとなしく走って退場したところも気になります。
杞憂ならよいのですが。

ともかく、それぞれに違ったシンデレラを楽しませていただきました。
さらにこの日は念願かなって、初めて終演後のバックステージツアーも当たり、本当にいろいろ興味深く、コーフンしました。
バックステージツアーのご報告はまた後ほど。