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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ「ダイナミック・ダンス!」(2):新国バレエはまだ進化できる

今回の「ダイナミック・ダンス!」はそれぞれ個性の違う3種の演目が踊られる、しかも3.11の大震災で公演延期となった舞台です。
3つの作品の共通テーマは「アメリカ」。

1つ目の「コンチェルト・バロッコ」、NYCBを創設したバランシンの作品で、音楽はバッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲。

2つ目の「テイク・ファイブ」は米国人のジャズピアニスト、デイブ・ブルーベックの同タイトルの曲に合わせてビントレー監督が振り付けた、ブルーベック&ビントレー・ワールド。
音楽は生バンドのジャズ・カルテットによるものです。

3つ目の(1)http://kababon.exblog.jp/17234531/で語った「イン・ジ・アッパー・ルーム」は、やはり米国人トワイラ・サープの異色作。
こちらは録音ですが、80年代のシンセサイザー音楽というのでしょうか。

クラシック、ジャズ、電子音楽と時代とともに音楽も変わる。
それとともに、振り付けもどんどんクラシックの要素にあれこれを加えながら、最後の「イン・ジ・アッパー・ルーム」では思いっ切り、突き抜けていく。
実におもしろい「ビントレー・チョイス」の、トリプルビルでした。

特に公開リハーサルで見せてもらった「テイク・ファイブ」は2種類の形を見せてもらいました。

舞台上のライトは3×3に仕切ったデザインをベースに、ライトが場面場面で次々変わる。
チェス盤のような白黒だったり、線の交差だったり。
レトロ・アメリカンな衣装がまたお洒落で、キッチュな雰囲気です。

作品構成は(1)男4+女性1の「テイク・ファイブ」、(2)女性3人の「スリー・トゥー・ゲット・レディ」、(3)男性1人の「フライング・ソロ」、(4)男女ペアの「トゥーステップ」、(5)男性4人の「フォースクエア」、そして(6)フィナーレ。

最初の「テイク・ファイブ」はファースト(F)が湯川さんで大人の魅力。
セカンド(S)が米沢さんで、彼女にしては大人っぽいながらも、ちょっとコケティッシュな味わいがあるかわいらしい雰囲気です。
女の子がポニーテールというのも時代かな。

リハーサルの時に「テイク・ファイブ」パートの最後のシーンは男の子たちが「バイバーイ」と去っていき、女の子一人が「えぇ~(しょぼーん)」という振り付けだったのですが、こえが本番では女の子も男の子と一緒に手をつないで退場、という振り付けに変更。
日本人にはこの方が向いてますね。
欧米の方々ならひょっとしたら「えー、ちぇーっ(ぷんぷんぷーん)」って感じでコミカルに演じられそうですが、日本人はまじめに演技しすぎて「がっくり」になっちゃう。

またこの「手をつないで退場」、米沢さんが会場に向かって手を振りながら引っ込んでいったのは米沢オリジナル?

また圧巻なのは「フライングソロ」!
アップテンポの曲の男性ソロでスクエの舞台を対角線、底辺から右辺、という感じでハイスピードで踊りまくる。
八幡君(F)はもうキレキレだし、福田君(S)はホントに楽しくてしょうがないという顔。
二人とも跳んで跳んで「ぎゅるるるる!」という素晴らしい技巧の持ち主ですから、まあもう見応えあるの何の!
こういう踊りをやらせたら、やっぱり八幡&福田だなぁ!
ちっちゃいけどパワーも迫力も満点!
そしてただ技巧に走るだけじゃない、見る者を納得させる+αをちゃんと醸し出すことができる。
二人とも、うるうるしてしまうお見事さでした。

トゥーステップは小野&福岡(S)の息ぴったりペアが超なめらかでドラマチック。
いちいち物語が感じられて、さすがのコンビネーションです。
ファーストキャストは本島&厚地でしたが、厚地・福岡も、細身スレンダーと体がっしり体育会戦士という、実に対照的なキャラです。
パワフル王子の福岡、ノーブル王子の厚地。
この二人、フィナーレのソロパートもそれぞれ持ち味がよくでていて、コンテンポラリーもいけるなぁ!と思いましたよ。

また特に印象的だったのはフィナーレの小野さん。
クールで、頭で役を理解して役作りに取り組む…、という雰囲気の小野さんが、ペアパートはもう満面の笑みでノリノリ。
作った、演技の顔じゃないですね。
理屈抜きに本当に楽しくてしょうがない、心から沸き上がる笑顔で、またパートナーの福岡君共々ジャズの音楽に実によくノってる。
小野さん、スイングしてるじゃん♪ってか、こんな風に笑えるのかー、という新発見気分です。
彼女にはまだまだ進化の余地がある。
いや、本当にいろいろ楽しみな人です。

ジャズのみなさまも、「2年かかりで準備した」という言葉が印象的。
ジャスがバレエと合わせるなんて、お互いにおそらく初めての体験だったでしょうが、回を重ねるごとにどんどん息があって行きました。
自分自身、ブルーベックが大好きなだけに、あの名曲「テイク・ファイブ」を生で聴けるということが幸せでしょうがない。
しかもこれまた大好きな新国の皆さんの踊り付きで観て、聴けるわけですからどれほど至福の時を過ごせたか。

またもうひとつの「コンチェルト・バロッコ」も音楽のヴァイオリンに漆原啓子さんはじめお二方を招いての演奏でした。
これがまた、特に第2楽章はヴァイオリンの音色が余りに優しくて、まさに踊りと音楽が一体となった、ゲストを呼んだからこその舞台でした。

キャストは小野・長田・山本(F)、米沢・寺田・厚地(S)。
どちらも清潔感と気品にあふれた踊りなのですが、小野バージョンはクールで知的な雰囲気が加わり、一方米沢バージョンはほわっと暖かい円い雰囲気というのでしょうか。
白を基調とした衣装なんですが、雰囲気的には小野バージョンはクリアな透明感のある白。
米沢組は暖色系のパールホワイトというのか。
米沢組はまた、寺田さんが思った以上にキリッとした雰囲気で、米沢さんのかわいらしさといい具合に解け合っていたのが印象的です。
いやそれにしても、米沢&厚地の身長差は、個人的に、視覚的にかなりツボです。

というわけで存分に楽しませていただいたトリプルビルでした。
いや、新国、まだいろいろ進化しそうです。
ビントレーさんの任期が終わるまでに、あとどれだけさらにレベルアップするのでしょう。
切なくもあり、でもやっぱり楽しみなのです。