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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場「ジゼル」初日:新国的ドラマチック・ジゼル

2月17日、新国立劇場「ジゼル」初日を見てまいりました。
新国でのジゼルは実に7年ぶり。
ある意味今回は初見のつもりで見てきましたし、また楽しめました。
アルブレヒトをアルベルト、ヒラリオンをハンスとするこのバージョンは、ドラマ性に重点を置いたプロダクト。
踊りはもちろん、繊細で行間が見えるような感情表現も素敵な新国バレエには、これはすごく合っていたように思います。

初日のキャストは長田&菅野組。
さらにハンスがマイレンと、これが決定打になり見に行くことを決めたわけですが、こののっけから登場するマイレン・ハンスがまあ、期待以上のキャラで、この時点でもうテンションMAXでしたね。

無骨な森番、ドロボウ髭付きの悪人面がいきなりお花持って登場ですもん(#゚∀゚#ノ)ノ
しかもそのお花がまた似合わなすぎるww
恋するジゼルにお花を渡したいんですが、扉をノックする勇気もなく、こっそり家の軒下に花束をさして去っていく。
ピュアです。
こういうギャップキャラは大好きです。

対するアルベルトは従者の制止も聞かず、いそいそと農民ルックに着替え、ジゼルのお家の扉をためらわずにノック。
怖いもの知らずの、貴族のぼったまです。

ジゼルが待っていたのはもちろんアルベルト。
貴族のぼったまとは知らないジゼルの、幸せ一杯の踊りが繰り広げられるんですが、長田さん、さすがの安定感。
久々の古典上演とあって、会場はお子様も多かったんですが、ジゼルのヴァリエーションにしても「これがプロの見本です」という感じで、まぁ情感豊かで、丁寧で美しい。
心臓の弱い、純粋な恋するお嬢さん。
新国立劇場のブログで「ジゼルの出生の秘密は」なんて記事を読んでしまったものだから、ついつい、母親も心臓が弱い、訳ありだけど可愛い娘が大事で大事で仕方ないんだなぁと思ってしまうわけです。

さて、細かいあらすじはオフィシャルサイトにもあるので、そちらをご覧いただくとして、1幕はクライマックス、アルベルトの身分がバレて、失意のジゼルが狂乱し、息絶えるまでのドラマ運び。

ラブラブのジゼル&アルベルトの間にハンスが割って入り、むっとしたアルベルトが本来あるはずの腰の剣に手を伸ばすんですが、従者に預けてしまっているので丸腰。
その仕草にジゼルもハンスも一瞬「えっ」てなるんですが、その直後に大勢の村娘がやってきて、その場はそのまま、うやむや。
でも小さな波紋を投げかけたシーンで印象に残ります。

また、結局ジゼルに思い届かず、軒下の花束に気づいてももらえないハンスが、自ら花束を抜き取りぽいと捨てるとこなんて、哀れ…。・゚・(ノД`)・゚・。
その花を投げる間がまた、マイレン、日本人顔負け…というよりもう、あるブログさんで言ってて、なるほどと思ったのですが、新国バレエのアニキなんですよなぁ。
我らがアニキ、マイレンなんですよ。
素敵すぎて泣ける。

実は貴族なアルベルトのおぼったまぶり、ジゼルの純真な恋する娘っぷり、ハンスのピュアな無骨者の思いが微妙に噛み合いつつ、どうなるんだろうと思いつつ迎えた狂乱のシーンですが。

いやもう、本当にすごかった!
いいシーンは本当にいっぱいあったのに、この狂乱シーンが全部もってった。
菅野君も「シルヴィア」のときからさらに経験値重ねたなぁとか、貴族に対する礼をするマイレンの嫌味っぽさと、村人のパ・ド・ドゥ踊った八幡くんの小気味よいほどに決まる美しい着地や相変わらずの小芝居とか、ほんとにいいシーンはいろいろあったのに、全部ジゼルがどっかに持ってっちゃった。
それほどまでにすごい迫力でした。

でも決してオーバーな演技をしているわけではない。
過去に見たジゼルでは、やたらと狂乱シーンばっかり派手…というよりはオーバーアクションで、振りと感情と演技力が噛み合ってないものなんか、それなりにありましたが、さすが長田さんというのでしょうか。

もう目の焦点が本当に合ってない。
怖いです。
どこを見てるの、見えてるのって感じ。
いっちゃってる。
そしてさらにすごいのは、アルベルトとの幸せな思い出のなかに入った瞬間、目がきらっと輝くんです。
もう一層怖いし、哀れです。

先ほどのアルベルトの剣の、いやーな感じの間じゃないですが、えっ??と思って打ち消そうと思ったものがやっぱり現実だったっていうのは、輪をかけてショックな気がするんですよね…。(うん…)
闇討ち不意打ちも効きますが、思い当たるかすかな「認めたくない」事実が、その「認めたくない」という思いに、二重三重にもの圧力でのしかかってくるというのか。
小芝居がいちいち効いてきている新国ならではの舞台です。

1幕の重さや厚さと打って変わって、2幕は幽玄の世界に入っていくわけですが、ジゼルがヴィリとなって最初にくるくると踊るシーンは「ああもう、そんなにくるくる回ってももう苦しくないんだねぇ(T_T)」という気持ちになってしまい、いつも切ないです。

またジゼルの影を追うアルベルトもすごく視線が泳いでて、真剣に姿を、気配を捉えようとしている感じがすごく印象に残ります。
コールドはさすが新国。
でも、もっと綺麗になると思う!

そして、魂となった、実態のない妖精ヴィリとなった長田さん、渾身の踊り。
ひたむきな、浄化されたピュアな想いが伝わってくる感じでした。
切ない…というかもう、濯ぎ落とされる感じっていうんでしょうか。
アルベルトが貴族だろうが、お戯れだったのかはどうでもいい。
死して霊となったジゼルに残っている純粋な愛情のみこそが、彼女の「存在」であり、真実なわけです。
ジゼル=アルベルトへの想い、というのか…。
だからジゼルは必死にアルベルトを守るのですよなぁ…。

最後にぐったり倒れたアルベルトを抱きしめる長田ジゼルの表情がまた、こう言っちゃ変なのは承知のうえで、ほんとに観音様みたいでした(笑)

明日20日はゲスト組。
そして村人のパ・ド・ドゥが米沢&福田という、これまた結構美味しいバージョンです。
なんか唯さん2種類見られるなんて、これもまたウレシイ限りです。