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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ「ペンギンカフェ」(1):オオウミガラスの見た夢…

4月28日、新国立劇場バレエ「ペンギンカフェ」の初日、ファーストキャストを観てまいりました。
(新国特設サイト→http://www.atre.jp/13penguin/
バランシンの傑作の一つ「シンフォニー・イン・C」、ビントレー監督の日本初演となる「E=mc2」、そして再演となる「ペンギンカフェ2013」。

 


それぞれにテイストの異なる3作品で、クラシック、コンテンポラリー、被り物バレエという独立した個性のある絶妙な、濃ゆいプログラムでした。
そして3つともどっぷり楽しませていただきました。

しばらく間を置いて5月3日にセカンドキャストを観に行く予定ですが、こうして今しみじみ噛み締めていると、それぞれ個性のある作品でありつつ、人の創造たる美と芸術、負の側面も大いに併せ持つ諸刃の刃のエネルギー、その創造の営みのなかで失われた地球上の命と危機にある命たち…という、人類の歩みと未来へのメッセージという、3作を結びつけられるようなものがあるようにも感じられます。

特に表題の「ペンギンカフェ2013」は、見る前からこりゃ絶対泣く、絶対滂沱だとわかっていましたが、想像以上に来ましたね(苦笑)
2010年の時と比べてなんだかメッセージ性がより濃かった…というか伝わってきたような。
振り付け等は、おそらくダンサー的にはマイナーチェンジがされているのかもですが、観る者にとっては大きな変更はない…はず。
でも前回に比べたら、しっとりとじわじわと迫ってくるものがありました。
ゲネプロも見させていただいたけど、やっぱりゲネプロゲネプロであって本番じゃない、ということも実感しました。
たくさんのお客さんと空気を共有するなかで見て感じるからこそのものもあるかもしれません。
そういう意味では、今回の初日は久々に、普通にたくさんお客さんがいるなぁ、という感じで本当に良かった♪

また自分的には公演前に「最後の一羽 ~オオウミガラス絶滅物語~」なんて本を読んでしまった…というのもあるかもしれないなぁ。

そんなこともあってか、あのペンギン・カフェ・オーケストラの心地良い、冒頭の音楽とともに映しだされたペンギン――もといオオウミガラスたちの故郷であるエルディ島の風景が、ひしひしと胸に迫ってきました。
彼ら(彼女ら?)はどっからみても立派にペンギンですが、でもオオウミガラスです。

ともかく陽気な音楽とともに、「ペンギン」たちのカフェを訪れるお客には、ペンギンも人間もいる。
ペンギンや人や動物が普通に一緒に暮らす世界です。

オオツノヒツジ、カンガルーネズミ、ノミ、シマウマ…。
次々現れる、ペンギンの仲間たち。

優雅、カワイイ、楽しい…と思っていた舞台は、シマウマの登場あたりからだんだんブラックになっていきます。
撃たれて痙攣し、断末魔を迎えて静かに倒れていくシマウマ…。

「シマウマといえば」「シマシマ
…なんて、事前のペンギントーク動画で語っていた古川さん&奥村君のトークが意味深に感じるほどに、白黒縞々の白が黒にシフトし、この物語の側面を暗示していくんですね。

カワイイだけじゃない、動物たちの現実…。

そして続く「熱帯雨林の家族」がもう、切ない。
シマウマの「現実」は人間にも及んでいます。
特に弱き者、進化した現代社会から遠いところにいる素朴な者ほどに、その「現実」はいっそう残酷に降りかかるのでしょうか。
住む森を追われ、でもそうしたなかで、寄り添い、手を取り合い生きていく三人家族。
唯一の、でもかけがえのない財産は、使われすぎている言葉だけど、やはり「家族の絆」。
美しくも哀しく、でも未来への希望があるとしたらもうこれだろう、という強い想いがこめられていて、また今回肉声で歌われた平賀マリカさんのスキャットが本当に響きます。
お母さんの思い、心です。
ガツンと来ます。
貝川さんのもさっとした雰囲気(大変失礼とは思えど、でも真剣に誉めています)が、熱帯雨林に住む家族大好き素朴なお父さん、という雰囲気にまた実にぴったりで、それで一層ジンときてしまうのです。

だからお猿のサンバが余計切ない。
明るい音楽の裏の悲哀というのでしょうか。
明るければ明るいほどに影も濃いというのか。
同時に生きる命の力強さなんかも感じられる、希望も悲哀も全て篭ったような、でもやはり陽気なシーンなのです。
なんと陰陽のくっきりした人生讃歌であることか…(T_T)

続くレイン――天変地異。
ここで人も動物もマスクを取り、等しい個々の「命」「いきもの」になる。
地球上で生きる命は等しく、優劣もないのです。
逃げ惑う人たちのなかでくるくると踊るペンギンの姿は、なんか過去に経験した何かを思い出しているようにも見えました。

デジャヴュというのでしょうか。

ペンギンは知っているんです、きっと。
昔、ずっとずっと昔に、自分たちや仲間の命を脅かされるような凄まじくも、恐ろしいことがあったのを…。

方舟にカフェのお客やペンギンの仲間たちが乗り込んで行っても、ペンギンは乗ることができません。
取り残されます、たった一羽で、暗い世界に。
…そしてペンギンは気付く…思い出すのです。
自分はペンギンではなくオオウミガラスで、もうはるか昔にその種としての命が途絶えてしまった「いきもの」だったことを…。
そもそもカフェのお客さんや仲間たちと手を取り合って、同じ未来を見ることができないのだということを…。

「ペンギンカフェ」は今は亡き、オオウミガラスが見た夢だったのか…。
人といろんな動物が一緒に暮らす世界。
共に同じ夢を見ることのできる世界。

でも暗闇に残されたペンギンはもう、夢さえ見ることもできない「いのち」だった…。
永遠に闇の中です。
切ないです。

なんだかこのまま絵本になってもいいくらいのお話です。
本当に深い。
かわいくて、切なく、だからこそストレートにメッセージが伝わってきます。
ファーストキャストの方々は2010年に続き2度目の方がほとんどだったので、それゆえに一層、お話の世界を深く、咀嚼されていたのかもしれません。

踊る側としては息ができない、視界がない、見えないなど、かなりきつかったのだろうと思うのですが、それでもこうして深く染み入るお話を演じてくれて、感謝です。

また今回の事前の「リレートーク@ペンギンカフェ」は間違いなくいい試みだったと思います。
まだ見ていらっしゃらない方は、こちらにまとめてありますのでぜひ御覧ください。
今見たら泣笑かもだわw

「シンフォニー・イン・C」「E=mc2」はまた別項で改めて。