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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ「ドン・キホーテ」(3):そして伝説の舞台となる

6月29日、新国バレエ劇団「ドン・キホーテ」、川村&厚地組は、あつじーファンの私的には本命のキャストです。

が。
オノラブルダンサー…実質上半引退となる川村さんと、今季限りで古巣のバーミンガム・ロイヤル・バレエに戻る厚地君という、サヨナラ組の公演とあって、やはり雰囲気がちょっと違っていました。
そして、「本当にこの2人がこれが最初で最後なのか!?ウソだといってくれ…!」という思いがのっけからこみ上げてくる1幕。
終わる頃にはあまりに惜しい、新国はおろか、日本バレエ界の大損失だ!あり得ない…!こんなこと、あってはいかん…!と叫びたくなるような、本当に永遠に心に刻まれた珠玉の舞台でした。

背の高いイケメン厚地君と組むと、大柄な川村さんが普通に…というよりは小さく、美しくもありまた可愛らしく見えるこの絶妙さ!
しかも川村さん、身体を絞ってきたのか、前公演で見た時に比べて別人かと思うほどスリムになっている!
コレは相当に彼女が努力した、執念だと思うんですが、その結果まぁなんと華のある舞台となったことか!

実は厚地君が「シンフォニー・イン・C」で見た、あの重たそうな川村さんを持ち上げられるのか、腰壊すんじゃないかと真剣に心配していましたが、おかげでリフトもバッチリと決まり、また静止時間も長く一安心です。

ともかく。
新国のダンサーさんたちはそれぞれに味わいがあり、今回ドンキを踊るどの組もそれぞれに個性的で良いのですが、やはり小さく可愛らしい系の女の子に、小さいが元気があってよろしい系の男の子が多いなかで、身長と存在感抜群の2人が主演の舞台というのは、実に栄える。
というか、日本人の組み合わせでこんなに華やかで、しかも踊りはもちろん、演技までいきいきと見せてくれる舞台があろうとは……!!
こんな舞台を日本人ペアで見る日が来ようとは……!!

もっと早くこの2人のペアが実現していたら…と思うと、本当に悔やまれますし、震災がなければ一緒に踊るはずだったというコンチェルト・バロッコも観てみたかったと、切に思います。
でも、その後川村さんが出産で産休に入ったり、復活したと思ったら、今度は厚地君が古巣帰り。
やはりそういう巡り合わせなのか、それでもこのペアが、滑り込みでも実現したという現実に感謝すべきなのか。

…すべきなのでしょう、間違いなく。
知らないよりは知ることができたことが、絶対良かったと、心底思います。

というわけで。
この日の川村キトリは大人っぽい雰囲気と落ち着きを持ちながらも娘らしい可愛らしさもあるキトリ。
厚地バジルは厚地くんらしい、優しく爽やか好青年。
ある意味、世界のデフォルトに最も近いキトリとバジルです。

何より驚いたのは、真樹ちゃんの演技。
彼女には「演技」の面ではほとんど印象がなく(というより、その頃はそもそも新国自体に「演技」がなかった)、卒なくキレイに踊るという印象だったのですが、この日はともかく表情が豊か。
真樹ちゃん従来の「姫」というより「女王様」テイストを残しつつも、でも角のとれた演技や視線、表情にはいちいち驚嘆というか感嘆。
もう半引退だというこの期に及んで、さらに一皮むけて進化したのか…!
なりきり度・演技度が高く、物語世界やキャラクターを深く掘り下げる厚地君と踊ることで、化学反応が起こったのでしょうか。

そんなわけですから、2人の意思疎通や掛け合いなど、本当に息がピッタリ!
川村さん、厚地君との絡みはもとより、マイレン父ちゃんとのやり取りもまた絶妙なんです。
マイレンもまた、小野キトリのパパとは違う、川村キトリの濃ゆいパパで、特にマイレンと川村さんは一緒に「団員」している時間も長い分、一層ノリノリに見えました。

華がある容姿に存在感が抜群ですから、濃厚度パワーアップの福岡エスパーダ御一行様が後ろに加わろうがドタバタしようが、キリッとした輪郭を保ち続けているところがスゴイ。

濃厚度抜群の福岡エスパーダ、先日のエルビス崩れでアモーレでムーチョに、さらにフレディでカラムーチョで、エアフリンジにそうか、あの赤白マントはフレディの王様マントで、バラの花咥えて実は密かに王冠もあるに違いない!という、相変わらず客席破壊力抜群のインパクト。

古川キホーテのボケ度は一段とアップし、八幡サンチョははちきれんばかりの無邪気なエネルギーが炸裂。
輪島ガマーシュは「ワタシはここよ~!」と言わんばかりの自己アピール度で、2人のお友達も前回より踊りも演技も抜群に安定している。

それでも喰われない、2人の存在感!
厚地君も小芝居に味があり、もうとにかく酒場で踊る仲間たちを見る目が優しすぎて泣ける…!
またキトリとお友達と楽しく飲んで飲んで、立ち上がるときによろけるシアワセ一杯の酔っぱらい青年にはドキリとします。
こんなバジルははじめて見たかも…!

そして狂言自殺のシーンで厚地君がマントを羽織って出てきた瞬間、床屋じゃなくて王子様に(笑)
本当にこの人は日本一マントが似合う男だ・゚・(つД`)・゚・
王子を踊るために生まれてきた男だと、また改めて思っては切なくなったり。

また森のシーン、川村ドゥルネシア姫と本島女王のまあなんと美しいことったら!
そこにフワフワとかわいい五月女キューピッドがキホーテ爺さんを導きます。
本当に、なんとまとまったいい舞台であることか…!

圧巻の3幕、グラン・パ・ド・ドゥはもう涙なしでは見られませんでした。
キレキレ、ノリノリで、でもエレガントに、でも渾身の踊りを見せてくれた厚地君。
つま先まで伸びてて、なんて美しくかっこよく、そして柔らかく優しいんだ…!
涙腺崩壊とっ越してもう嗚咽モードです。
これが(ひとまず)最後かと思うともう、素晴らしさに切なくて、ただただ一挙手一投足を見逃すまいという思いで見ていました。

いつまでも鳴り止まないカーテンコールには、会場の人たちの「感謝」と「頑張れ」等々、諸々の思い全てが込められていました。
厚地君の踊りきったという笑顔と、舞台の仲間たちに感謝の挨拶をする2人の姿がとても印象的!
もう絶対に忘れない。
永遠に記憶に残る、伝説の舞台です、間違いなく。

30日はいよいよ最終日の寺田&奥村組
厚地君も3幕のボレロで登場、実質上新国ダンサーとしての(ひとまず)最後の舞台になります。
絶賛売り出し中の奥村君。
「伝説」から「未来」を担う、ドン・キホーテです。