arT’vel -Review- : art × Travel/旅×アート レビュー

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」:雪の女王も金平糖もそばにいる

12月22日、新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」、主演は金平糖が米沢唯さん、王子が福岡雄大君。
雪の女王が小野絢子さんで、クララが井倉真未さん。

この日は朝からチケット争奪戦でした。
チケットは戻りゼロで、当日券22枚を早起きしてGETするという争奪戦ですよ。

もうイヤ。
懲りた。
結局一日シゴトで時間の無駄ですわ。
本当にいい教訓だったと、最初に言っておきます(^_^;)

しかも22日は連休中日にも関わらずマチネ1回だけなんて、どうしてこう売れそうなときにマチソワにしないんでしょうね。

ともかく。
この日は劇場到着が8時50分頃だったのですが、すでにざっと人数を数えたらかなり微妙な雰囲気。
9時過ぎた頃からもっと大勢人が来たのですが、結果的に私が22枚中21枚目という際どさです。
間に演劇研修所のチケット希望の方が3人入って21枚目ですから、その3人がみんなバレエ希望だったらアウトだったということになります。
恐ろしい…((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

ともかく、見辛さこのうえないZ席とはいえ、こうなるとプラチナチケットです。
ほんとに4階の壁際の端っこで、Zに座る以上見切れるサイドはハナから捨てるとは思っていましたが、ほんとに真ん中だけしか見えませんや。
新国「くるみ」だから我慢できる席だけど、これがストーリーがしっかりしていて、後ろでこちゃこちゃやってる人を含めて舞台の隅々まで見なきゃ、という新国ならではの濃密な舞台を楽しむ演目だったら、全然お話にならないですね。


というわけで、本題。
主演の2人と雪の女王、クララ以外のキャストは21日とほぼ同じです。
フリッツの小野寺君は健康的で元気な男の子で、やんちゃだけどやっぱりおぼっちゃま、という絶妙さがツボ。
お父さんの輪島さんの身のこなしが優雅で見惚れました。
素敵な紳士ですよ、輪島パパ。

でも1幕は…というか1幕もやはりすごいのは雪の女王・小野絢子。
オーラの消しっぷりに唖然。
21日の金平糖の時にあれほど発していたオーラをしっかり封印(?)して、舞台の中の登場人物の1人としての、いわば「ワキ役・雪の女王」としての立ち位置をしっかりわきまえた踊り。
ガラスの仮面」的に言うなら「舞台という石垣の一つ」になりきった踊りです。
昨日あれだけまばゆいオーラを発していた人がこれですから、ホントにすごいです。
主役も脇もそれぞれ俯瞰して徹することができる小野絢子という人は、わかっているけど、やっぱりただ者じゃない。

この日の金平糖の米沢さん、すごく優しい、慈愛のある金平糖です。
柔らかい砂糖菓子のようで、ふわっとした味わい。
米沢さんはこの「となりにいる」という感じが持ち味ですね。
雪の時も人に寄り添って生きる、雪遊びをする子どもたちを優しく見守っているような暖かさがありましたし、この金平糖もふわっと天空から包み込むような、やっぱり慈愛のあるお姫様です。
でもいつもの彼女とはちょっとちがうかな?
感情のままに炸裂する踊りが多い中で、米沢さんもいろいろ考えながらやっているのかな、という印象も受けました。

ディベルティスマン等々は21日と22日はほとんどが同じキャストでした。
大きなところで違ったのがハレーキンが21日は奥村君、22日は八木進君。
中国が男性は原さんなんですが、女性が21日は竹田さん、22日が五月女さん。
スペインの男性が21日が古川さんで、22日が菅野さん。

スペインも女性は両日大和さんという大人の魅力で、古川さん共々いいドヤ顔。
菅野さんバージョンでは隙なく背筋が伸びた中に大人の色香も漂っているのが素敵。
でも、ホントにこのスペインの、特に男性の貧乏臭い衣装が私は嫌で嫌で。
百歩くらい譲ってジプシー(ロマ風)衣装とも解釈しても、スペイン=ジプシーはないわ。
前にも書きましたが、2幕の華やかな宴の先陣を切って登場するスペインには全然ふさわしくないです。
いつまでも着ていたいとは思えないんじゃないでしょうかね。
終わったら速攻脱ぎたくなるんじゃなかろうか。

トレパックの三人衆が八幡・福田・宇賀ですが、八幡・福田という超絶技巧派にしっかりついていく宇賀君、お見事です。
クララが金平糖に武勇伝を語っている脇で、そのトレパック三人衆がまたこちょこちょやってるんですが、考えてみりゃ、そのくるみ割り人形をトレパックの福田君がやってたわけで、そう思うとなんか笑えます。

新国の葦笛、素人目からみてもすごく難しいテクニックで、しかも3人合わせなきゃならないんだから、こりゃ大変だと思いますし、踊る皆様はお見事としか言い様がない。
でもその一方でどうも発表会のテクニック披露のプログラムのように見えてしまうのは何故でしょう??

クララの井倉さん、彼女をじっくり見るのはくるみのシーズンに多いのですが、ちゃんと少女になってるところがすごいです。
最後に夢から覚めて現実に戻ってきたときの表情にドキっとしたのですが、こんな風に表情豊かに演技する人だったか…。

1幕の雪のコールドも、2幕花のワルツのコール・ドも相変わらずすごく美しい。
21日の帰りに「ここのバレエ団って男子も揃うんだよ、すごいよ!」と興奮気味に語っていたカップルがいましたが、ほんとに新国のコールドはきれい。
ちゃんとそれぞれのダンサーの人間味が感じられる体温のあるコール・ド・バレエです。

と、どうにも中身がなく、しょうもない演出の「くるみ」をこれだけ見せてくれるダンサーさんたちは本当に素晴らしい。
だからこそ、もっとそれぞれのキャラを掘り下げ、厚み深みのあるストーリーならどんなにいいかと思ってしまうのです。
ほんとに、早く改訂して。
切実なる願いです。



追記1)
千秋楽の後24日に新国立劇場バレエ団のブログでダンサーさん達からのメッセージがUPされてましたが、これがまた暖かくていいですね。

一時帰国で千秋楽を鑑賞された、今はバーミンガムに移られた厚地君までいるんですが(笑)、一緒に写しちゃう上にそのままアップしちゃうところがいいです。
新国らしい暖かさです(´∀`)


追記2)25日に6月の「パゴダの王子」のメインキャストが発表されました
さくら姫・王子・皇后エピーヌの順に、小野・福岡・湯川、米沢・菅野・本島の前回キャストに加え、さくら姫に奥田さん、王子に奥村くん、さらにエピーヌに長田さんというこれまた面白そうなキャストが組まれています。
奥田・奥村の兄妹なんてかわいすぎ!
想像するだに微笑ましい!

「パゴダ」はとにかくバレエに興味のある方ならぜひ見てほしい、必見おすすめ舞台の1つなので、この話題は上演まで時折思い出したように書く………かもです。
最近ブログにまで手が回らなくて自信ないわ(^_^;)