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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ「パゴダの王子」(2):強き姫とひたむきな姫

引き続き今更w




パゴダの王子、セカンドキャストの米沢&菅野組、そしてサードキャストの奥田&奥村組
6月14日、マチネ&ソワレの連続で、さすがに疲れました。
中身が濃厚なだけに、終わった頃はヘロヘロです。
あらすじはこちらの特設サイトで。

●ひたむきなさくら姫

まずマチネは奥田&奥村組
奥田花純さんはこの日が全幕主演デビューです。

以前「ファスター」で急遽主演になったとき、非常に正面から役に取り組んでいて好感度大でしたが、このさくら姫も、小野・米沢さんとは違った、奥田さん自身の役作りをしてきたのでは。
正面から役をとらえ、彼女自身で考えたであろう姫は実にひたむき。
目の前の課題に正面から逃げずに全力で取り組むというような、おそらく今の奥田さんそのものを体現しているかのようです。
目の前の道をただ、自分の足で懸命に歩いていこうというような姿には涙が出ました。
身の丈の姫です。

また奥村王子、思っていたとおりかわいらしい兄妹でバレ友さんの「安寿と厨子王」がめちゃくちゃツボりました。
さわやか系のかわいい兄ちゃんで、すごく年の近い、いつも一緒に手をつないで遊んでいたような、双子のような兄妹という印象です。
いつも一緒にいた片割れがある日突然いなくなってしまった、そんな感じでしょうか。

そんな兄妹だからこそ、あの記憶のシーンはまた違った味わいがありました。
「孤独な子供たち」という事前のPRキャッチに一番合っていたのはこの2人だったかも。

この回は隣の席がお父さんと小学生くらいの娘という珍しい親子連れだったのですが、この記憶のシーンでお父さんがどうやら目水鼻水状態(^_^;)
3幕全てが終わったとき、娘が「お父さん!おもしろかったね、お父さん!」といっていたのが実にほほえましかったです。

またエピーヌが悪役デビュー(笑)の長田さん。
彼女もまた湯川さん、本島さんとは違った、なんというのかエロかわいい魅力のエピーヌです。
いいですね。
踊りはさすが!という感じで安心して見られますし、以前の公演でさくら姫を踊ったからこそのエピーヌという感じです。

北の王がこの日が唯一の登場の江本さん。
安定した忠実な踊り、というのでしょうか。
もっと出番があっていい人かと思うんですが、いやいや、新国で役を得るのは大変です…(^_^;)


●兄ちゃんより強いぞ、さくら姫

ソワレの米沢・菅野組。
この回は総じてセカンドキャストで、皇帝も4人の王も道化も変わります。

菅野さんは王子もいいのですが、キャラがお兄ちゃん寄りなので(レスコー役は実によかった)、このパゴダの王子役は本当にあっています。
堅実な優しい、穏和だけどやるときはやるお兄ちゃんです。

また米沢さんがきりりと筋の通った、誇り高き一人娘であり姫様。
そんな妹を優しく見守る兄ちゃんっていうのでしょうか。
こういうお兄ちゃんだから、おとなしめな子供時代も容易に想像できますし、だからエピーヌにあっさりトカゲにされちゃったりという顛末もよくわかる。

米沢さくら姫はとにかく強い。
エピーヌに対しても継ではあるが母として敬意を払いつつも、姫としての誇りをしっかっりもっている。
1幕からすでに由緒正しき姫(お嬢様)VS継母です。
結婚の拒否も実にきっぱりしている。
それでいて、パパは大好きで、トカゲとともに旅立つところの間などはすばらしいですね。
あの病気がちのお父さんを置いていくのか、という心の迷いが伝わってきます。
それでも自分の意志を貫き、旅立っていくその決意。
彼女の物語世界は実におもしろいです。

後ろ髪を引かれながら、もう後戻りはできない覚悟の第2幕。
自分の世界に、ひょっとしたら兄様がいなくなって初めて自分の世界を持つことができた姫は、妖怪さんと楽しそうに手をつないだり、タツノオトシゴたちと一緒に踊りたくなったりと、実に表情が豊か。
かわいいです。

記憶の場面は、米沢&菅野組だけがシンクロせず、ずれた感じだったのですが、これはそういうふうにしたのか、子役が合わせ切れなかったのかどうなのか。

3幕はまさに米沢さくら姫炸裂。
正体を現した4人の王が襲いかかってくるシーンは不思議なことに、この4人の王も化け物だったのか?と思えるから、キャスト違いは楽しい。
そして米沢さくら姫は真ん中で陣頭指揮です。
お嬢様、司令官です。
「落ち着け、皆の衆」といわんばかりに、あわてる新貴族たちを鎮めます。
新貴族に守られながら兄と4人の王の戦いを見守り、だけど参戦する小野&奥田さくら姫とはここで性格が完全に分かれます。
なんか兄ちゃんより強そうな、おてんば姫です。
これはこれでいいですね。
こんな兄妹だってありでしょうから。

この日はエピーヌが本島さんでしたが、目元のメイクを変えた本島オリジナルがよかったです。
そして踊りも特に2幕は尻上がりにパワー炸裂。
あの炎はすごい!
鬼気迫る感じです。
このエピーヌという役は早変わりに次ぐ早変わり&踊りまくりで本当に大変な役だと思いますが、これを踊れる人が3人いるっていうのもまたすごいです。

皇帝がマイレン。
初演に続き2度目ですが、やはりこのマイレンさんはすごい。
この皇帝も3幕は息子に続いて娘まで失いぼろぼろなうえ、家臣にからかわれ、しかしキリリと立ち直り、最後は息子娘とともに戦うのですから大変です。
でもさすがのマイレンといいますか、正体を暴かれしなだれかかる皇后を振りきるところなど、その心情の細かいところまでしっかり見せてくれます。
彼なりの円熟の味わいがあります。

またこのセカンドキャストの道化、高橋君が、福田君とは違った風味で場をわかせ好感。
しかも皇帝大好きです。
皇帝大好きな思いがとっても伝わってきて、あのオバQメイクがどんどん愛らしく感じられます。

4人の王は福田、輪島、小口、宝満君。
この日同行していた妹が、福田北の王を見て「この人みたことある気がする」。
実は以前あの「くるみ」を一緒に見たことがあるんですが、その時のトレパックが福田君でした。
やはり彼のあの驚異の身体能力はインパクトに残るのかもですね。
輪島さんの東の王はどこかしらパワーも感じられます。
イケメン小口君はスターズ&ストライプスが妙にハマってるし、宝満君も堂々としたアフリカン・パワーです。

とにかく3人のさくら姫もとい、3キャストの舞台はそれぞれ味わいが違い、ダンサーさんの個性がうまくかみ合いすばらしいものでした。

最終日、千秋楽は「特別」な舞台でした。
それはまた別に。