arT’vel -Review- : art × Travel/旅×アート レビュー

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

ワーグナー・イン・ブダペスト2017:企画はアダム・フィッシャー、「指輪」連日上演

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11月11日、ハンガリー大使館にて「ワーグナー・イン・ブダペスト2017」開催についての記者会見が行われました。 公式 http://wagnerinbudapest.hu/

登壇したのはなんと、世界のマエストロ、アダム・フィッシャー氏。 ハンガリー人であるマエストロ、現地表記でお名前を正確に記すなら「フィッシャー・アーダム」となりますが、ここでは慣れ親しんだアダム・フィッシャーでまいりたいと思います。

なぜマエストロ・フィッシャーが登場したかと言えば、このイベント自体がマエストロの企画によるものだそう。 氏はイベントの芸術監督も務めるほか、期間内に上演される演目すべてで指揮します。 ファンにはかなり堪らないイベントです。

●「指輪」を4日間連続上演

この「ワーグナー・イン・ブダペスト」は2006年から始まったもので、今年で10年目を迎えました。 文字通りワーグナーのオペラを上演するイベントで、「ワーグナー・デー」とも呼ばれます。

目玉はワーグナーの大作「ニーベルングの指輪」4部作の、4日間連日上演です。 演奏時間にして合計16時間、休憩も入れれば(そして時間通りに始まることはないでしょうから)おそらく延べ20時間を超えることでしょう。 観客も1日5~6時間は覚悟という、まるでワーグナー耐久レースのようなイベントですが、しかしマエストロ曰く「まるで麻薬のような感覚で、1作品の演奏を終えるとすぐまたやりたくなる」ということ(笑)

それはともかく、「4日間連日」というのは世界でも滅多になく、本家バイロイトでも間に休日を挟んで上演しますから、バイロイトでは4部作すべてを観ようと思ったら、それだけでまず1週間はかかるわけです。

これが旅行者的に何を意味するのかというと、極端な話、「4泊6日で“指輪”全作が鑑賞可能」ということです(現実には後泊は必須ですから、最短5泊7日となりますが)。 演奏はハンガリー放送交響楽団/The Hungarian Radio Symphonic Orchestra(レコーディングの際は「ブダペスト交響楽団」なんですね。コバケンこと小林研一郎氏もここと共演しています)。 出演者は世界で活躍するソリストが登場しており、2016年は先頃亡くなられたヨハン・ボータジークムント役で登場していました。 演出はマエストロ曰く、「過剰な舞台演出は極力行わない」そうで、衣装もかなりシンプルな感じです。 何よりマエストロ自身がバイロイトワーグナーを振り、オペラ指揮者としては非常に評価の高い方ですから、演奏クオリティはかなり期待できるというものです。

●ホールには「3層の合唱エリア」を配置

エストロ・フィッシャーによると、会場となる「ブダペスト芸術宮殿(Mupa)」はまた音響設備が素晴らしいということ。 芸術宮殿公式 https://www.mupa.hu/en

smupa-b%ef%bd%8da-bart%ef%bd%a2k-national-concert-hall-canopy-2014-c-mupa-budapest-janos-posztos Mupaもまた2005年にオープンしたブダペストの新しい劇場で、大ホール「バルトーク・ベーラ国立コンサートホール」と小ホール「祝祭劇場」の2つを擁します。 「3層の合唱エリア」は“バルトーク”のホールにあるのですが、実はこのホールを設計する段階で、フィッシャー氏はワーグナー作品を上演することが頭をよぎり、ワーグナーが自作のオペラ上演の際に考えていた「3層の合唱エリア」を作ることを設計者に提案し、受け入れられたのだとか。 また天井の天板は、作品に応じて角度を変え、反響を工夫しているのだそう。 さらに、客席と舞台の距離が「観客の顔が識別できるほど近い」とマエストロ。 結果、「ホールの四方八方全体から音楽が降りそそぎ、奏者観客含め一体となって音楽に包み込まれ、全身で響きを感じられるような空間」になっているのだとか。

こうしたホールで演奏されるワーグナーがどのような力を持って体感できるのか、あの重厚なドラマがどのように迫ってくるのか、実際に聴いてみたくなります。

因みに会見時、前回の「ワーグナー・イン・ブダペスト」の動画が上映されたのですが、その途中でマエストロがすっくと立ちあがり、スクリーンの前で両手をぶんぶん振って「違う違う!これではダメだ!演奏の良さが伝わらないっ!」と動画を止めてしまいました(笑) そして客席にくるりと向き直り「みなさん、ぜひ現地で音の素晴らしさを実際に体験してください」と、一言。 作品に対する愛、芸術に対する熱意が感じられました。

●チケットは1万円弱、街のコスパも良し

気になるスケジュールは以下の通り。

ワーグナー・イン・ブダペスト2017スケジュール

6月 8日 パルジファル 16:00 2200~8000円
15日 ラインの黄金 18:00 2400~9000円
16日 ワルキューレ 16:00 2400~9000円
17日 ジークフリード 16:00 2400~9000円
18日 神々の黄昏 16:00 2400~9000円
19日 リエンツィ 16:00 1300~4500円
21日 パルジファル 16:00 2400~9000円

 

チケット価格は日本円にして最高価格で1万円弱(2016年11月11日現在)。 安い席ですと2500円程度という、破格のブダペスト価格です。 また19日の「リエンツィ」はコンサート形式となるため、最高価格が5000円弱、最低で1300円程度。 さすがブダペスト(笑)

実際にブダペストは非常に「コストパフォーマンスの良い旅行地」としてしばしば海外の旅行サイトでも取り上げられているように、物価がとても安いにもかかわらず、質がいいのです。 このワーグナーのイベントに限らず、ハンガリー国立歌劇場(オペラ座)でも、ロイヤルボックスの隣の席で5000~6000円程度、リスト音楽院大ホールでも1階席3000円程度という、舞台、音楽を楽しみたい者にとってはとてつもなくコスパの良い国です。

しかもワインの国で料理も上質、空いた時間は世界遺産の街を探訪するなど、街歩きも楽しい。 19世紀にカフェ文化が花開いた街でもありますから、気の利いたカフェもたくさんありますし、ビールは100~150円、ワインもブダペストならグラスで100円台(地方じゃ100円切ります)。 普通のワインでもボトルで300~500円くらいで買えたりします。 様々な面でコスパが非常によろしいのも、ブダペストの魅力です。

4日間のワーグナー耐久に参加したら疲れ果てて、午前中はまったり過ごしたい、という時はどうぞ温泉へ。 ハンガリーは温泉の国なので、ブダペスト市内には水着でまったりと浸かれる温泉がたくさんあります。 お湯は日本より温めですが、ゆるゆると浸かっていたら、身体が芯から温まります。 温泉に浸かってチェスをする映像で有名なセーチェニー温泉や、ゲッレールト温泉のようにアールヌーヴォー様式のゴージャスな施設もありますので、おすすめです。

ご興味のある方、ぜひお出かけください。

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