arT’vel -Review- : art × Travel/旅×アート レビュー

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

ダンシング・ミュージカル「Les 3 Mousquetaires Le Spectacle」(2):改めて感じる本国デフォルト

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さて第二部です。

 

公式→http://www.les3mousquetaires-lespectacle.com/

第一部レポ→ダンシング・ミュージカル「Les 3 Mousquetaires Le Spectacle」(1)

 

「やることやって」シーツにくるまったダルタニャン&コンスタンスのデュエット(Reste)でスタートです。

しかしこのコンスタンス、金髪なんですが、どう見ても太めのイモ姉ちゃん。

いや、私が見る舞台は圧倒的にバレエが多いので、ミュージカルレベルでも太めに見えてしまいますし、オペラに至っては眩暈を感じることもありますが、それにしても太いです。

まぁ、これはこういうキャラで合うというか、ある意味コンスタンスってイモくさい方がしっくりくることもありますので、良しとしましょう (笑)

 

●ロンドン行、銃士の脱落行(笑)

 

引き続き三銃士+1、鞍馬にまたがってのロンドン行です。

プランシェが小さい鞍馬でロバでしょうか、かわいいです。

銃士ファン的にはこれ、三銃士の脱落行でもありますが(笑)

どんな風に落ちていくのか、果たして落ちないのか、端折られるのかが興味深いところだったんですが、今作はしっかり一人ずつ落ちていきました。

 

[caption id="attachment_927" align="alignleft" width="450"] 籠の鳥アラミス。いや、未だに謎シーンの一つです(笑)[/caption]

道を急ぐ銃士たちの前に現れるミレディの刺客、コマンドー親衛隊。

最初に捕まるアラミスが、なぜか籠の鳥の如く天井から吊され脱落。

「はっはっは!文字通り籠の鳥だな、歌え!」とジュサックにののしられ、素直に歌う(笑)アラミスのナンバー(Un jour)。

籠の下では親衛隊に追われながらもアラミスを探しつつ、しかし使命を全うするために、先をゆく3人の仲間。

思わず「後ろ!後ろ!」……じゃなくて、「上!上!」と言いたくなるんですが、しかしここは笑いを取る場面なのか、シリアスに感じ入る場面なのか、未だに謎です(笑)

 

お次の脱落はポルトス。

仲間とはぐれたところにポールダンスの美女に誘惑され、陽気な気持ちのいいナンバー(Ho hé)を歌いながら酔っぱらい、捕獲されます。

ダメじゃんww

 

●アトスとミレディ、濃厚な怨恨世界

 

ダルとはぐれたアトス。

そこに過去のミレディなのか怪しい美女なのか、謎の女性が現れます。

その美女の誘惑に落ちながらの愛憎入り交じるダンスシーンは、アトスとミレディの現在と過去を語り、またいままで抱えてきた思いも交錯するよう。

愛なのか、憎なのか。

時間軸が交差し、ないまぜになりながらも互いの心情を伝えるシーンは、「そうか、こういう見せ方あったのか!」と唸らされました。

しかも次第に「憎」の方が強くなっていき、特に3回目の鑑賞では「憎」がとても強烈で、「うん、そうか、そうだよな」と納得。

 

デフォルトが(良くも悪くも)お貴族ボンボンのアトスはそういう価値観を呼吸し育ち、またそれを疑うことなく骨の髄まで染みついていますから、その価値観の中でしか人を愛せません。

それが自分の世界の範疇外のものであれば「裏切り」となり(勝手に彼の世界の価値観で)傷つきます。

それはミレディも同じです。

自分の立場で愛したのか、はたまた絡め取ろうとしたのかはともかく、今となっては自分を殺そうとし、迷い道に放り込んだ男を許すはずもない、ミレディの価値観で復讐を誓います。

 

実にフランス的なアトスとミレディの解釈で、「本国作品でこうしてしっかり見せてもらった」ということが実にうれしい。

それぞれがそれぞれの立場と己の価値観のもと、自由に生き、自由に傷つきます。

出会ったことが(互いに)不幸だったとしか言いようがない。

 

アトスと幻影の美女の愛憎の踊りはますます激しくなり、そこへミレディが静かに登場。

怨念と一抹の切なさのこもったスキャットとともに登場し(まるで怨霊のよう)、幻影の美女と踊るアトスを背後からグッサリ一突き。

 

ドラマチックこの上ない、息を潜めて見守る濃厚なシーンでした。

おそらくこのミュージカルの名場面のひとつです。

踊りは無言だからこそ、その情報量はハンパなく膨大です。

ああ、これぞ舞台の醍醐味……「おお!おお!」「そうか!そうか!」と膝叩きまくり、うんうんと首がもげそうになり、ここまでですでに堪能感いっぱい。

シアワセだわ……(*´꒳‘*)

 

●孤独な猊下と目で語る役者たち

 

三銃士が脱落し、ダルはプランシェを連れてジュサックを振り切りロンドンへ。

天井から吊り下げられた半球の船、フィジカルチームが動かす布の海。

荒波を越え、一人で困難に立ち向かうダルのナンバー(S.O.S.)が歌われます。

通路も駆使した大きな動きで、見応えのある美しいシーンでした。

 

場面変わって猊下のナンバー(Seul contre tous)。

孤独な猊下なりの立場の戦いです。

「フランスを強大な国家にする」

その信念のためにはその途上の犠牲も仕方なし、という感じでしょうか。

他の二次創作(笑)によっては、無条件に単なる悪役にされがちなリシュリュー猊下ですが、この方のフランスでの評価は高いのです。

そしてやはりフランス人はその辺はきっちり押さえてきたようですね。

 

そしてロンドン。

取り巻きに囲まれながら陽気に人生を謳歌する公爵の歌(On my mind)と踊り。

王妃とは別れたものの、それはそれ、これはこれ、というエピキュリアンのような割り切りで、この公爵はーwwと思わず苦笑。

そこへ荒波を越えてきたボロボロのダルタニャンが到着し、王妃の手紙を差し出します。

もう目がとてつもなく語っている。

そして手紙を一瞥し、だまって首飾りを渡す公爵。

ダル登場から無言でサクサク、これが僅か2分ほど。

普通ならこれだけで延々尺を取るシーンですが、ホントにいいですね、このテンポの速さ。

余計な言葉なんかない、必要最低限しか語らない。

演者あっぱれ。

 

再び半球船で追っ手と戦い怪我をしながらも、フランスを目指すダルタニャンです。

ダルタニャンの大冒険!

すごいわ、がんばれ!と子どもだったら手をグーにして見守ってしまいます(笑)

その背後で、スキャットを歌う王妃と寄り添うコンスタンス。

これだけで王妃の不安とダルの帰還を待ち望む女性たちの気持ちがヒシヒシと伝わってきます。

余分な台詞は徹底削除。

何度も言いますが、お見事だわよ、ホントに。

 

●ヒロイン「王妃」と大団円

 

そしていよいよクライマックスの舞踏会。

王妃を待つ王と枢機卿、ミレディ、そしてどうやって脱出したのかの三銃士が並びます。

もう勝利を確信したかのような猊下とミレディのほくそ笑み。

 

しかし。

華々しいファンファーレとともに、白いドレスをまとい首飾りを付けた王妃が満面の笑みで駆けだしてきます。

両手を広げて。

なんてかわいいんでしょう!

キラキラですよ!

 

最初はおばさん王妃と思っていましたが、どんどんかわいくなるんです、この人。

客席も万雷の拍手喝采で「我らが王妃」を迎えます。

じわっと来ますね、このシーンは。

フランス版「三銃士」のヒロインは王妃でした。

 

喜ぶ王、そしてその後からコンスタンスを伴い登場するダルタニャン。

そそくさと姿を消す枢機卿とミレディ。

ダルタニャンの勝利で大団円です。

 

最後のナンバーはダルを中心に銃士たちが歌う「Levons-nous」。

そしてカーテンコールはアンサンブル、ジュサック、王、プランシェ、猊下、公爵、コンス、ミレディ、王妃、ポルトス、アトス、アラミス、ダルタニャンの順(確か)。

 

銃士たちが歌う「Tous pour un」。

客席のちびっ子も舞台に上げてもらって、場内一つになってのグランドフィナーレです。

さらにアンコール2つ目は、アラミス役のダミアンが音頭を取って「J'ai besoin d'amour comme tout le monde」のアカペラ大合唱。

そして「1人はみんなのために、みんなは1人のために(Un pour tous, tous pour un!)」のコールでサヨナラ。

実に楽しい、スピーディーで爽快な舞台でした。

 

行ってよかったです。

演出やストーリー展開、そしてオールシングルキャストという役者さんたちの熱演、フランス銃士だからこそ腑に落ちた長年の謎等々、得るものが多い舞台でした。

衣装は実にセンスが良くて、この点も含めてフランスらしくてうれしくなりますね。

これで原作を読んでもまた違ったものが見えそうです。

 

果たしてこれが日本で上演されるのかはわかりませんし、いろいろな観点からかなり難しいだろうと思いますが、来日公演があったら楽しいだろうなぁと思いつつ。

再演されたらまた見に行ってしまいそうです。

楽しい舞台でした。

感謝!

 

 

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