arT’vel -Review- : art × Travel/旅×アート レビュー

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

第27回清里フィールドバレエ「白鳥の湖」:2幕からでも幻想舞台

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7月30日、今年も萌木の村で行われる清里フィールドバレエに行ってまいりました。

野外舞台で行われるこのバレエ、舞台が天然のセットで実に幻想的で、一度見ると本当にクセになります。 美術監督(?)がある意味「自然」ですから、二度と同じセットはありませんし、照明も月夜だったり星空だったり。 効果に夜霧がつくこともあれば、夜風がさわさわと木々をゆらすこともあります。 雨に泣かされることもありますが、それでも天然の森や山を背景に繰り広げられる物語世界は格別のものがあります。

して、30日のこの日は主演が新国立劇場バレエ団の看板ペア、小野絢子姫と福岡雄大王子。

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2回しか出番がないので、土曜日に重なったこの日に出かけてまいりました。

が。 清里到着時は晴れていたのですが、コンビニでいろいろ仕入れていたら突然の滝雨。 あと2時間の内に止んでくれ~!!と宿で雨音を聞きながら祈るような気持ちでいたら5時半頃に止みました。

ラッキー!と思っていたのですが、開演7時直前に再び雨が降り始め、7時15分頃に実行委員の舩木さんの「7時半まで様子を見て止まなかったら中止」という苦渋のアナウンス。 雨天中止となった2年前の公演が頭をよぎりましたわ……。

でも無理して水に濡れた舞台でダンサーさんが転倒して怪我でもしたらそれこそ一大事ですので中止も致し方なし、しかし止んでくれと祈るような気持ちでいたら、まさにタイムリミットの2~3分前にぴたりと止み、星空が!

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スタッフさんたちの手際のいい水切り作業で、無事開幕となりました。 ああ、よかった。

●2幕からでも幻想舞台

この清里の白鳥、シャンブルウエストの今村先生と川口ゆり子先生のバージョンで、短縮版ですがとてもよくまとまっており、お話に破綻はありません。

終演時間の都合もあるため、舞台は(残念ながら)1幕省略で2幕はアダージョのみ(1幕のパドトロワに逸見さんのお名前があり、とても懐かしい思いでいたのですが、見られずに残念です)。 とはいえ、情感たっぷりの絢子&雄大ペア。 何度も白鳥を踊っている2人だけに、途中からだろうが何だろうが、隙はありません。 シャンブルウエストのコールドも毎夏踊っているだけあって安定の美しさです。 森を背景に夜空に浮かび上がる幻想の白の世界、本当にため息が出ます。

3幕、4幕は通常通りの上演。 すっかり星空のもと、3幕開始の音楽に合わせて、リアルに花火が打ち上げられるシーンは客席からも「おお!」と声があがり、盛り上がります。 1幕カット、2幕アダージョのみなどなかったように、雄大王子はオデットのことで心がいっぱいで上の空。 黒鳥に魅せられ墜ちていきます。

各国の踊りはスペイン、ナポリチャルダーシュのみ。 チャルダーシュに吉本さんが登場し、懐かしいお姿を見せていただきました。

黒鳥のグランパドドゥ。 各国の花嫁候補たちまでが黒鳥の魔力に取り込まれてしまったかのように、絢子姫の踊りに見入っていたのが印象的です(笑) 先日新国立劇場で上演された「こども白鳥」でも思ったのですが、絢子姫は黒鳥のシーンが実に艶っぽく、女っぽくなってきています。 情感の見せ方がとても妖しくていい感じ。 ロットバルトは省エネ(笑)なのか、椅子にどっかりと座ったまま、時折腕を差し出しながら黒鳥とアイコンタクト。 ですがマントが長めの衣装で、窓辺のオデットを消すときに立ち上がったときの存在感がでかい。 (ちなみに窓辺のオデット、つまりオデットの影は松村さんなんですが、ここまでしっかりプログラムに名前を載せてくれています。新国見習ってほしい)

4幕の湖のシーン。 この清里バージョンはチャイコフスキーの一番最初の原典にあった、今は「チャイコフスキー・パドドゥ」のアダージョの音楽で王子と姫の和解のシーンが上演されます。 ちょっといつもと勝手が違う白鳥ですが、王子と姫の気持ちが伝わってきます。

そしてクライマックス。 この清里版はアンハッピーエンドです。 互いの思いを確認しあった姫と王子はロットバルトに戦いを挑み、あわや勝てるか?と思うところまで追いつめますが、やはり悪魔の力には勝てず、姫は身投げ。 王子も後を追います。 2人の死でロットバルトの魔力が弱まったところ、残された白鳥たちが姫の仇!とばかりに全力で立ち向かい、ロットバルトも滅びるという展開です。

ラストシーンはリアルに木々の間に死んであの世で結ばれた王子と姫の姿が……。 このラストシーンが実に幻想的で清里の野外ならではの見せ場のひとつ。 音楽ともども感動的なシーンで、いつまでも心に残ります。 またアンハッピーエンド版は今の新国では見られませんから、絢子雄大のアンハッピーエンドバージョンを見ておきたいがために今回足を運んだというのも大きな理由ですが、それほどまでに素晴らしいものでした。

前半カットはあったけれど、このラストシーンで報われた気分ですし、天候で左右された公演でありながら、お話を紡ぎだした主演2人や舞台上、舞台の後ろなどで見守っていたスタッフ関係者すべての皆様、本当にありがとうございました。

また雨の中、騒ぐことなくじっと待っていたお客様たち。 このイベントを心待ちにして、苦情も言わずに待ち続ける温かさあってこそのフィールドバレエで、だからこそまた来たくなるのです。 地方の人達が(短縮版とはいえ)舞台芸術に触れる、素晴らしい機会でもありますし。 (ただ会場アナウンスでも言っていましたが、上演中の写真撮影はカーテンコールまで待ってください。特にフラッシュはダンサーさんの目に入って転倒事故につながる可能性があるので、絶対!!やめてくださいね。身体が資本のダンサーです。スタッフさんが速攻止めに回ってくれて本当によかった)

公演終了後は運営資金協力も兼ねて(笑)、特別色紙を買ってサイン会に並びました。 後ろに並んでいた女の子が「王子様のサイン欲しい~」と言っているのを聞きつつ、「雄大君よかったねぇ」と心のなかで笑っておりました。

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というわけで。 フィールドバレエ、8月10日まで上演しています。 お時間が合えばぜひどうぞ。 キャスト待ちとはいえ、すでに来年も楽しみでなりません。

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