arTravel: art × Travel/旅×アート

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ団「ニューイヤー・バレエ」:新春にふさわしい幕開けで

f:id:artravel:20180924131517j:plain

1月6、7日、新国立劇場バレエ団「ニューイヤー・バレエ」を観てきました。 パ・ド・カトル、グランパ・クラシック、チャイコフスキー・パドドゥ、シンフォニー・イン・Cというプログラムで、(特に男性ダンサーは)限られた出演ではありましたが、新春にふさわしいクオリティで、楽しませていただいた公演でした。

●パ・ド・カトル
19世紀、タリオーニを筆頭にグラン、グリジ、チェリートという4大プリマが共演したザ・古典中の古典といえる演目。 本島、寺田、細田、木村と、新国を代表する4人の美女が勢揃いという実にまばゆい舞台です。

有名なリトグラフのポーズから始まり、4人の優雅かつ(本来)火花も散る踊りで、まあ大原監督が気合いを入れて指導してきたのでしょう(監督、お好きなんですね、こういうのが)。実に華麗で華やかでふわっとした夢のピンク色の世界です。メイクもちょっと時代がかった白塗り昭和テイスト?

本島タリオーニがとにかく圧巻。この存在感と貫禄は今もこの先も早々出せる人はいないんじゃないかというすごさ、美しさ。 おきゃんなキャラの寺田さん、かわいらしく透明感あふれる細田さんに混じって、若手の木村さんも堂々たる踊りでした。木村さんはこういう古典作品、雰囲気があってよいですね。

●グランパ・クラシック
今回一番感動したのが小野&福岡組のこの演目でした。 海外のダンサーで何度も見ている演目ですが、この2人のは世界観共々、今まで観たどれとも違う、2人のグランパ・クラシックでした。 衣装も凛としたクール系の白地に淡い水色から紫へのグラデーション。チュチュは白地の下に紫が挟み込まれていて、それが上に透けてうっすら色を差していてとても上品で、この2人にとてもよく合っている。 身体は外国人ダンサーより小さいけれど、実に清楚で華麗で気品にあふれていて優雅、高貴です。

絢子姫は音楽の一音一音や強弱すべてを身体に取り込んだ、まさに音楽振り付け一体となった踊り。 雄大君は柔らかく力強く、かといって力みもなく、気がついたら宙に浮いているという跳躍で、しかもそれが淀みなく自然につながっていく。 とくに2日目は2人の腕や足の角度もぴったりとシンクロしていて、感涙ものでしばらくぼーっとしていました。

雄大君はここ最近とくにスタイルがよくなり、すらっとしてますますいい感じになっている。すっかり新国の看板であるにも関わらず、まだまだ伸び代があり、今回後述の「シンフォニー・イン・C」共々、踊り続ける限り観たいと、改めて思いました。

チャイコフスキー・パドドゥ
米沢&奥村組。 以前吉田都&堀内元さんらのガラで観たときより、大人になった感じのチャイパドです。 なにより2人とも解放されたように、またお互い良く知った者同士ゆえのびのびと、実に楽しそうに踊っていて、はじけるようで気持ちがいい。

唯ちゃんのテクニックは相変わらずすばらしいし、奥村君はちょっと観ない間に(泣)大人の男性っぽくなっていて。 この2人の全幕ものをぜひ観たいと、改めて強く思いました。 やっぱり波長の合うもの同士がよりいい舞台になるでしょうし、それがプロの舞台の見せ方だと思うのですが。

●シンフォニー・イン・C
インCは大好きで、実に久しぶりで、やはりうれしい。 もはや新国のお家芸とも言えるバランシン、コールドに至るまで隅々までが音楽にきっちり乗った見事さは痛快というか、団体による芸術というのか。 様々なバレエ団でいろいろなバランシンを目にしていますが、ここまで見事なものはそうないだろうと、やはり思います。 新国のバランシンはすばらしいです! 6日にカーテンコールで登場したバランシン財団のパット先生のニコニコ顔がすべてを物語っていたような出来映えでした。

第1楽章の米沢&福岡ペアはどちらもテクニシャン。バランシン的な精密な技巧の応酬にはもってこいで、唯ちゃんは3度目ですが、優雅さも加わった踊りで見応え満点です。 雄大君は貫禄十分。 柔らかく力強い跳躍や身のこなし、素敵。 ソリストの飯野さんが、彼女も体型はふっくら系で独特のキャラですが、今ではそれが彼女ならではの愛嬌満点の踊りとなり、伸びやかで楽しそうに踊るところがとてもいいです。 柴山さんも技術はしっかりした人できれいに踊りますし、以前に比べだいぶ輪郭が見えるようになりましが、でもやはり顔の中が私にはまだ掴みきれず(のっぺらぼう気味)、そういう意味では小柴君とよく似た感じ。 彼も大原監督になってから機会を与えられることが増え、きちんと踊る子になったなぁと思うのですが、しかしコレという輪郭が見えづらいのです。可もなく不可もなく、というのか。 中家さんはポジションを理解した上での安定の存在感です。さすが。

第2楽章、とにかくまずは菅野マスターの神的サポート! キャラクターじゃない菅野さんは久しぶりですが、このサポートの見事さはさすがマスターの面目躍如とうのでしょうか。絢子姫が伸び伸びと踊り実に優雅で美しいです。いやぁ、このペアもいいんですよね。もっと観たい。時々はペアをシャッフルするのも刺激になるのでは。なによりお客も楽しいし新鮮味がある。 寺井、玉井の2女子に清水、さらに新人の趙君の抜擢。 趙君、がたいがしっかりしており、先の「くるみ割り人形」のアラビアでもサポート組に入っていましたが、これから観る機会が増えそうな気配がします。

第3楽章は渡邊王子の溌剌とした軽やかさ、伸びやかさ、スタイルの良さに釘付けです!! もうホントに彼は王子です! またソリストの奥田、五月女、福田兄、木下の4人の叙情的かつ職人的ダンサーさんが色を添えて感動的。 特に五月女ちゃん、ますます表情豊かで彼女はほんとに素敵で見ていて楽しい。 して女性プリンシパルですが、以前のような遊園地のリサイタル的な下品さもなくなり、技術的にはましになったと思いますし、重心が低いので安定感がありました(てか、あれだけ強引に理不尽な機会を与えられていて、上手くならないならいない方がいいです)。 ただいかんせん相手の男性が小顔ですらりスリムでスタイルがめちゃめちゃよすぎて、女性が顔も首も身体も倍くらい太く見えてしまいました。 重力を感じさせない男性の浮遊感に対し、重力に愛された女子という地面感があり、見栄え的には完全ミスマッチ。 Twitterでも話が出ましたが、渡邊君は井澤弟君ともどもも、美女映えするタイプだと思います。というか美女じゃないと女性が霞む。彼と組む女性側に見栄えを凌駕して余りある表現力と技術力と、せめて身長があるというなら別かもしれませんが。そういう意味ではすごい男性陣になったもんだと思います。 バレエにおいて外見・容姿は絶対的な実力の一つだと、改めて思いました。

第4楽章は6日が細田さん、7日が木村さん。
やはり6日の細田さんは存在感がありプリンシパル役として貫禄があり、美しいし踊りも優雅。なにより千晶姫の踊りを存分に楽しめて、6日は私的には千晶祭りでした。 また千晶姫は相手の井澤弟君とは以前の「ラ・シルフィード」でも組んでいますが、ペアになった時の見栄えがとても美しいです。 千晶姫は凛とした個を保てるクリスタルのような美しさがありますね。相手が誰でも、その光を反射して輝けるクリスタル。カーテンコールで渡邊峻郁君と隣同士でしたが、このペアも美しくて見栄えするかもです(観たい!) てか、井澤弟君が異様に貫禄ついていて(笑)

木村さんは「パ・ド・カトル」の古典は美しく、また物語を生みだそうとする演技力と意欲はすごく好きで買いますし、その点はすごく将来性を感じますが、やはり古典とは言語の違うバランシンは大変だったようで、最後まで踊り切ったなぁという感じ。 やはりバレエ団は古典だけでなくバランシンやコンテなど、いろいろな言語の踊りを踊っていかないといけないなぁと思いました(てか直前のキャスト変更の意味がわかりました)。

でも4楽章の次々増殖していく高揚感と、最後はびちっと揃ったコールドで締めるフィナーレは本当に圧巻でした。何度もいいますが、「新国立劇場バレエ団」としての全体の芸術です。

見応えのあったニューイヤーガラですが、気になるのは限られた男性しか出番がなかったということ。 お休みの男子がどれだけいたかと思うと、団員流出も含めて気になります。 かといってトロイゲームやイーグリング作品を何度もやられても「?」という感じですし、男性の活躍できるいい作品をもっと増やすなり委嘱するなりしてあげてほしいなぁと思いました。 そういう意味では、先日発表になった2018/2019シーズンの中村恩恵さん委嘱の「火の鳥」、どういう作品になるかわかりませんが、期待です。

というわけで、次回は「ホフマン物語」。 いろいろ評価が分かれる作品ですが、私は好きです。そして楽しみです。