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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ団「こどものためのシンデレラ」:美とパワーの出雲公演

9月13日、新国立劇場バレエ団「こどものためのシンデレラ」出雲公演に行ってきました。 こどもシンデレラでよくぞ行くわと我ながら思えど、出雲、もう一度行ってみたかったのだしチャーンス!とばかりに出かけてきました。 いいですね、出雲、松江、境港。 のんびりしてて、人もゆるい(笑)

そして会場はほぼ満席。 「こどものためのシンデレラ」ではありますが、親子連れはもちろん、おばあちゃんも含めて三世代バレエとか、おしゃれした中高生に大人のお姉さん等々客層が幅広いのは、やはり出雲で本格的バレエが来る機会は多くはないからでしょうか。

そんな出雲のお客さんに、めちゃめちゃ弾けまくった、上品ながらもパワーも溢れるこどもシンデレラです。

いやぁ、今回は東京で2回見ていますが別物?的にみなさんアドリブ効いていて楽しそうです。

主演は米沢唯ちゃん&井澤君。 義理の姉ズに、この公演が(ひとまず)最後となる大和雅美隊長に奥田花純ちゃん。 パパが輪島さん、ダンス教師に小笠原君、道化に高橋一輝君。 仙女は本島さん。

とにかくのっけから姉ズがパワフルです。 踊りも去ることながら、芝居もでかい。 もう好き放題…といっていいのかどうか、唯ちゃんシンデレラとの場面など「キャーそんなにいじめるなw」と思うほど(笑)

でもそこはプロで、唯ちゃんもけなげなシンデレラ的におろおろしながら(おそらく内面は強烈に)全力応戦。 スリリングです、みなさん。 もうここでエンジン全開です。 華麗な踊りの舞台の水面下で全力で水掻きしている白鳥というか、火花散ってますね。

そんな出だしで姉ズが一気にお客さんを引き込み、しょぼしょぼパパにダンス教師が華麗に登場。 姉ズの下手踊りがまた前に見たのとは違うアドリブ……でしょうか?? 奥田さんが人形振りを思わせるカチカチした動きは、これは次回公演オランピアのリハ!?(笑)

とにかく姉ズがあれやこれやと好きに動く分、小笠原教師がめちゃくちゃエレガントに見えます。 姉ズのアタックをかわす仕草もいい呼吸。 その横で睦まじく踊るパパとシンデレラがほっこりかわいい。

姉ズの勢い止まらず、仙女登場時は、婆さんを遠巻きに見ながら「くっさ――!」と鼻つまむ演技まで(笑) 心の中で大爆笑。 この婆さん仙女退場時に、子ネズミたちが吸い寄せられるようにトトトト…と後をついていくシーンが地味に好きです。 かわいいし、なんかもうここから魔法が始まってる感じで。

こんなドタバタで、一同が舞踏会に行った後の「し――ん」という静けさが実に際だつ。 そこに本島仙女、華麗に登場。 貫禄です。 美しいなぁ。

仙女のステッキをしげしげと眺める唯シンデレラは好奇心旺盛な女の子でしょうか。 カボチャの人力車がどうしても笑えます。 男性星の精は林田君は確認できましたがもう一人は誰だろう。 キャスト全員出してほしいもんです、ほんとに(これは本公演でも声を大にして言いたいところですが)。

2幕、道化一輝が絶好調で、お客さんから拍手喝采です。 姉ズを軽やかにかわすのも一輝君テイストでしょうか。 空気感のある道化で、またやはりいい呼吸です。 マズルカに男性陣フル活用でなぜか輪島パパや飛脚林田等々も。 早変わりお疲れさまです。 でも相変わらずコールドが男女ともども美しいです。

そして王子の井澤君。 イケメンで一人輝いてます。 ザ・王子という感じで、終演後のロビーで女子高生だか中学生だかのグループが「王子が一人で王子でかっこよかったー!」とキャイキャイ言ってました(笑)

彼は今回でなんとなく井澤キャラが見えたかもですね。

なんつーか、いい人キャラっていうんでしょうか。 ちょっと熱めの演技は厚地君を彷彿とさせます。 生真面目さは菅野さん的でしょうか。 もう少しスノッブになってもいいと思うんですが、でも謙虚さも見えて、これはこれで好感持てます。

唯シンデレラと踊ったあと、退場したシンデレラを追っかけようとした瞬間、姉ズに遮られ、すごい超がっかり顔をしながらも、わけわかんねー姉ズにも、王子として礼を尽くす、そんな王子です。

道化に盛り上げられ、王子としてキリリと「よきにはからえ」と王子として対しながらも、心は上の空。 オレンジの踊りのバカ騒ぎとの対比がまたいい。

そしてオレンジのパートもここぞとばかりに姉ズがダイナミック。 奥田さんがなにか一皮むけた感じで非常に弾けて成長著しいです。 素晴らしい! 彼女はこのあと「ホフマン物語」で主演3人女性の一人のオランピアを踊りますが、それもあってか、非常にいいキャラがでてきました。 お茶目で元気があって、彼女のキトリなんていいんじゃないでしょうか。

脱線しましたが、とにかくそんなパワフルな大騒ぎでどっと盛り上がった後に続くパドドゥが実によいですね。 王子のうれしそうな顔(笑) そして12時の鐘のがっかり顔と、靴屋相手のいらいら顔。 唯ちゃんとの息もかなり合っているし、いいペアです。 やはり背中は堅い感じがしますが、バレ友さん曰く「あの風貌でクネクネしてたら逆に変かも」。 うん、そうかもしれない。

自宅に帰って、片っぽだけ残った靴を姉ズに見つからないように「アハハ(滝汗)」という感じで隠して立ち回る唯ちゃんがかわいい。 このシンデレラは素はなかなかお茶目です。

また舞台の隅々までみなさん何かしらこちょこちょやってるから、見るところがたくさんあって困るし、さすが新国の舞台です。 最後まで息切れしないパワーも素晴らしい。

カーテンコールでは大和姉がオレンジを持って出てきて、それを奥田妹に手渡すんですね。 なんだかバトンタッチのようで、心の中で泣きました。 本当にこの姉ズ、息がぴったりでした。 そして主演としてばっちり締めた唯ちゃん&井澤君。 はるばる出雲まで見に行ってよかったなぁと思える舞台でした。 出雲のお客様も楽しまれたようです。 「もっと長いの見たいね」という声も耳にしましたし、親子連れもたくさんいて、盛況でした。

新国ブログの出雲レポートに出待ちのちびっ子たちとの交流の様子が載ってて「お姉さんはなにを踊った人ですか~?」という問答があったそう。 「バレリーナ」という存在自体が、やっぱりあこがれの象徴なんですねぇ(^_^)