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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ団「ホフマン物語」(3):健闘ホフマンと埋もれた作品発掘の意義

さて千秋楽11月3日の井澤ホフマン。

特設サイト http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/hoffmann/

キャスト表 http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/upload_file/1516_Hoffmann_cast.pdf

今回3人のホフマンの中では一番若く、また主演数もまだまだ少ない2年目を迎えたばかりの、やはりまだ新人さんです。

踊りは盤石の雄大君、予想を翻して彼なりのホフマンを見せてくれた菅野さんときて、この若い井澤君はどうなるのかと逆に心配&期待でしたが、これがまた実にすばらしい、大健闘でした。

もちろん会場が凍るほどの痛恨のミスに、怪しいサポート等々踊りに関しちゃ終始ドキドキではありましたが、なにより彼がすばらしいのは「ホフマン」というキャラクターを彼なりに考えて、先輩方とは違ったアプローチをしてきたところです。 それにより、「井澤ホフマン」による物語世界ができあがり、説得力のあるものになっていました。

デビュー以来、ろくに場数も踏んでいないのに劇場の変なごりごり押し売りで、こちらも気の毒に……と思いながら、一歩引いて見ておりましたが(ほっといても真ん中を踊らざるを得ないオーラがあるんだからごり押ししなくていいのに、と)、淡々と自分のなすべきことをこなしている感もあり、今回それが一つの形として実を結んだ感じです。 よかったなぁ。 彼のいいところはオレオレと増長しないで、謙虚に努力してきたところです(呼んでもいないのに出てくるのもいるし@クラスレッスン見学。これは後述)。 技術よりはやはり演技派。 いいところをのばして、がんばってほしいです。 (とはいえ、やはり舞台経験がろくにない主演抜擢はしらけます。客舐めてんのか、と声を大にして言いたいです。ほかに主演の見たい子なんてたくさんいるんだから)

●抜け出せない伊達男の業

プロローグ さすがにここまで見続けると、見る方もこの話は最初のしょぼくれと1幕の恋が実に大事だとわかってきます。

果たして井澤ホフマン。 しょぼくれホフマンは動きがやっぱり若々しいかな……??とも思いましたが、考えてみれば昨今の60代メンズはまだまだ全然元気だ。 そこまで老人っぽくなる必要もないのかな?

今回はホフマン以外はファーストキャストの芸達者な面々。 八幡・福田・奥村はやっぱり格別です。 本島ステラ、やっぱり美しい! しょぼくれてても本島&井澤は見栄えがゴージャスです。

と井澤ホフマン、ステラの登場ではたっ!と上着の襟を正すんですね。 昔の伊達男の名残? 大事なステラ様です、いいです、この感じ。 若い気持ちを失ってないホフマンです。 うん、若い友人たちがいてもおかしくない。

マイレン悪魔、雄大君のような強烈な壁感はここではなく、少し抑え目でしょうか? でもやっぱり彼の存在感は立っているだけで目を引きます。 ホフマンを売って後ろめたさいっぱいの今村お付き。 今村さんの丸いキャラがよく出ていていいですね。 後ろの子たちも今日はより演技が大きくて分かりやすい。 ステラにハンカチもらって彼女からどつかれてる彼がいいです(笑)

1幕 スパランザーニと助手も今日はいっそうハイテンション。 小口君の濃さがいいなぁ。 先日2011年の「アラジン」の映像をみましたが、このときの小口君は全然オーラないんですね。 4年の間に舞台を重ねた成長が、おそらく「結婚」の花婿を経て、昨年の「シンデレラ」の宝石商・前髪ウザオで弾けたのかもですが、いい成長です。 楽しいよ、小口君。

ホフマンの登場。 さすがにピンクがよく似合う! そしてステラの時と同様、襟をピピッと正して伊達男炸裂。 ご婦人方、そりゃあノックアウトですわ、という説得力(笑)

そしてお人形に恋します。 長田さんが連日のおみくじ人形(バレ友さん談)からちょっと人間っぽさが見える。 この微妙さがまたいいです。 もう調子に乗ってブンブン踊るからクライマックスで出てくる本物の人形がドキっとしますね。 そしてそれをバラしてからかうスパランザーニとその一味がまたいい。 小口君、からかいっぷりが半端ないわーw

嘲笑の中、がっくり崩れ落ちるホフマン。 だまされたー&恋を失ったショックない交ぜ。 プロローグから1幕の終わりまで、息をも付かせぬスピード感と世界観! ここでこの舞台は絶対成功!という確信が生まれました。 ……でも舞台は甘くなかった(笑)なんたるちあー

2幕 アントニアの幕。 絢子&井澤ペアは初めてです。 美少女とイケメン、実に絵になる! このペアもっと見たいんですけど! この2人で「ホフマン物語」屈指の幻想シーンをやるのかと思うと期待が高まります。 そして期待通り美しいのです。 この幻想シーンをみるだけでも価値ありますし、ここをしっかり見るために、一度は地上に降りた方がいいですね、ほんとに……!

が。 絢子回れない、一本足リフト2回はなかなか難しいが何とかクリア。 大丈夫か、大丈夫か、とドキドキのなかで、クライマックスで会場が凍り付き、一同心の絶叫であろう、痛恨のリフトミス……。 あああああああ、心臓止まるかと思った。 大丈夫か、井澤君このあと大丈夫か……と心配になりましたが、そこは気力ですね、すごいです。

アントニアが踊り狂うシーン。 菅野さんのような激しさはないものの、マイレン悪魔の魔力で弾かされてしまう、後ろすら向けない……そんな感じでした。 アントニアが死んでがっくり崩れ落ちるシーン……なんかリアリティが加算されている……。

3幕 アントニアを失いどん底なうえ、さらにリアルにダメージも加わっての3幕。 「舟歌」が切なく痛々しいです。

でも放っておいてくれない魔窟。 妖怪たちが迫ってくる―。 小姓の2人が今日はいっそう弾けているようで、迫力あります。 ホフマンの足をがしっ!と捕まえるところは地獄の餓鬼のよう。 コワイww それでいてホフマンの足をなでなで、スリスリは本気でヤバくてドキドキで、井澤ホフマンのマジで嫌がってるような顔が激ツボ(笑)

そしてジュリエッタ登場。 今日は唯ちゃんです。 ハッとするホフマン。 衣装が襟付きならまたピピッとやりそうで、でも胸にあるのは十字架で、その間がよいです。 伊達男は業か……。

痛恨の2幕だけに、3幕のお相手が踊り慣れた唯ちゃんでよかったなぁと思います。 しかも今回に限り2幕3幕の間の休憩が25分ありましたし。 もちろん5分延びたからって、どうなるのというのはありますが、それでも何か、この人は持ってるなぁと思わせられます。

が、容赦ないジュリエッタ(笑) いつにも増して強気で力押し半端ない、この日は。 「落ち込む隙なんか与えませんわ」的に(笑) 唯ちゃんに関してはこの日のジュリエッタが一番よかった気がします。

そして悪魔祓い、十字架ビーム。 そして虚脱感……。 またやっちまった感がなんともいいです(いや、悪いことじゃないんだけど)。

エピローグ そしてクライマックス。 しょぼくれ感にもリアリティ満点(泣笑) 4人の女性の幻影と、逃れられない悪魔。 最後の最後、この悪魔の手の動きにあわせて、かすかに背中をのけぞらせる仕草は……この後のホフマンの運命を感じさせられてドキっとしました。 この伊達男は、また恋して振られるのかもしれない……。 逃れられない、業でしょうか。

カーテンコールのお辞儀はまるで工事現場の「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」の如く直角で、本人の「スイマセンスイマセンスイマセン……」というような気持ちがひしひしと伝わってきました。 絢子姫が井澤君の手を引っ張ってリードするのが良かったわ(´∀`) ……絢子姫も何度も転んでるもんねぇ……。

でも会場はわかってたと思います。 彼がどれだけ真摯に「ホフマン」と向かい合ってきて、それを出そうとしたかを。 だからこその万雷の拍手だったと思います。

ぜひ再演で、リベンジをしていただきたいものです。 井澤君に限らず、菅野さん、雄大君ともども。

●これから「育てる」作品

この「ホフマン物語」、(1)でも書きましたが、大原監督が人生の転機に出会ったという、思い入れのこもった作品です。 マクミランと同期のダレルという人の作品がなぜ埋もれているか……それはやはりそれなりの理由がある、というのも見ていてなんとなくわかります。 だってそもそも主演キャラが明確じゃないもの。 例えばマクミランの「ロミオ」のように、しっかりした原作がありキャラがあり、それを自分なりに掘り下げるのとは違う。 原作自体がそもそも寄せ集めのうえ正体なくしてるし、オペラとも変わっている。 バレエはバレエ、の作品です。

でも強い思い入れを持つ芸監がこの作品にスポットを当て、後日Twitterにありましたが、バレエ団のメンバーが「みんなで創り上げました」と言える作品となったということに、この「ホフマン物語」の発掘意義、今回の上演意義があったのではないかと思います。

もちろん今回の上演がパーフェクトではありませんし、団員も若いです。 これから再演を重ね練りに練り上げ続けて「この作品はすごい」と世に知らしめる……そんな日がくる……かもしれません。 作品が育つ課程、という過渡期を目の当たりにしたのかもしれない。

世界的な名作を上演することは、それはそれですばらしいことですが、この「ホフマン物語」のように埋もれていながらも団員が楽しみ、大事に育て上げていく作品を手にしたこと。 これはこれでとても大事なことであり、やはり幸運なことだと思います。

こうした作品を大事にして、ぜひ練り上げての再演を望みます。

●公開クラスレッスン

今回は公開クラスレッスンもありました。 一般販売で公開クラスレッスン付きを最初に発売されて、こちとら会員は先行発売と同時に全キャスト買ってるんだから、そりゃあないだろうと激怒ではありましたが。 ちゃんと会員向けにも実施する、というフォローはありました。 この辺超厳重注意ですよ、新国さん。

レッスンは吉本先生。 懐かしい。 思い切りオペラオンでダンサーさんを捜しますが、舞台メイクと違うから素顔で探すのが結構大変(笑) 真ん中のマイレン、さすがの貫禄。 左に八幡君、右に悪目立ちの彼(背が高いのに猫背気味。もったいない)。 池田君は動きがきれいで後ろの方にいてもわかります。 重荷をおろしたような晴れ晴れとした菅野さん。 江本さんはやっぱり動きがエレガントだー。 素顔は以外と地味な小口君に、相変わらずスマイル炸裂の原君。 井澤君は……というと、後ろの方で思いっきりオーラ消して影を潜めてる。 「僕のことは気にしないで、どうぞ先輩方をご覧になってください」といわんばかりの潜伏っぷり(笑) 保護色か擬態ナナフシか。 雄大君と輪島さんがいないのは、別室でしょうか??

女性陣、唯ちゃん、絢子、キレイ。 花純ちゃん、楽しそう。 本島さんは素でも美人だし、今や大御所の丸尾さんは貫禄あるなぁ、頼もしいなぁ。 千晶ちゃんは淡々と踊ってる。

「終了でーす」のコールの後に男子たちのサービス。 ハッスルしすぎー(^_^;) 井澤君が最後に出てきましたが「気をつけろ~怪我するな~」とハラハラ。 「終了しました~」の再度の係員さんのコールですが、出られないよ、これじゃ(笑)

こういうクラスレッスン見学は初めてでしたが、楽しかったです。 ぜひ今後も続けてほしいイベントです。