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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ団「こどものためのバレエ劇場 白鳥の湖」(1):コンパクトでも濃厚

7月21日、「こどものためのバレエ劇場 白鳥の湖」こと「こども白鳥」の午前(小野&福岡)&午後(米沢&井澤)を見てきました。

毎夏やっているこどもの劇場体験も含めた時間の短い簡略版バレエですが、あなどるなかれ、なかなか濃厚ですし、なによりダンサーさんの質がいいので、大人も相当に満足できます。 毎年この時期に同じことを書いていますが、クマのぬいぐるみ「シュタイフ」の創設者であるマルガレーテ・シュタイフさんの「こどもの最初の友達だからこそ、最高のものを」という言葉があります。 まさにそれと同様に、子どもにとって貴重なバレエ鑑賞体験だからこそ最高のものを、と思います。 できればフルオケが望ましいのは言わずもがなですが、そうなると家族3人、4人で気軽に行こうと思える価格を超えますから、そこは致し方なしでしょう。

●コンパクトでわかりやすい新制作版

新制作版のこども白鳥、間に休憩20分を挟んで正味1時間半くらいでしょうか。 各幕の始まりにあらすじのナレーションが入ります。

1幕は「ワルツ」の曲が終わるまでに、王子の誕生日から王妃登場と退出、アンニュイな王子が湖へ狩りに出かけるところまで全部やってしまう(笑) 一瞬ですが潔い。 そして王子のソロはしっかり入れている。

2幕はじっくり見せます。 ヴァリエーションは有名な4羽の白鳥だけを残してカットですが、アダージョのところはスローテンポでこれでもか!というくらいじっくりと。

休憩を挟んで3幕の各国系の踊りはスペインとナポリのみ。 1幕でカットされた道化の見せ場がここでは残ります。 その代わり黒鳥のグランパドドゥはしっかり、アップテンポで。

4幕は短縮して嘆きから一気にクライマックス。 新国本版に比べ、ロットバルトの死にざまが納得できるので、むしろ本版より気持ちよく見られ、満足度も高い。

ストーリー的に大事なところはしっかり残っていますし(てかそもそも白鳥の話って端折ればこんなもんw)。 もうあの本版やらなくていいから、白鳥やりたかったら、こども白鳥やっててくれていいくらい。 ちゃんと売れているようですし、実際3階まで客入って土日完売だそうですから。 白鳥の威力はやっぱりすごいですね(笑)

周りのお子さん方も客電落ちた瞬間シーン!と静まり返り、息を飲むように真剣に見入っていたので、こっちもその熱気と真剣さに負けじと見ていました。

●午前:安定と信頼の小野&福岡組

kodomohakuchou1こども版であれ、新制作の初演は看板ペアの小野&福岡が登場。 やはり大事なところを信頼して任せられる2人なのでしょう。 そしてその期待に応える質の高さです。

紗幕が開いて真ん中に王子が立っているところでお話は始まりますが、紗幕の白鳥に王子がダブって見えるのがなかなかいい感じです。

王妃が本島さんで、これがまたかわいらしく美しい。 踊る機会が少なくなっているのが惜しいのですが、しかし立ち居姿の美しさはホントにため息が出ます。

道化の八幡君ですが、彼はアラジンを踊って吹っ切れたのかリセットかかったのか、非常に柔らかく跳躍も高く、品もよく、白鳥の道化役を踊らせたら日本一で、世界に出しても恥ずかしくないだろうというクオリティ。 王子との息もぴったりで、どこかのインタビューで言っていた「静かな王子の感情表現役」という言葉が思い起こされました。

2幕の絢子姫はもう安定の清楚さ、美しさ。 アダージョのシーンはリア充オーラ炸裂で目が潰れそうなくらい、キラキラです。 絢子姫の白鳥はやっぱり2幕がいいです。

この回、見応えあったのが4羽の白鳥。 最初に出てきたときから、いつもと違うぞ?感があったのですが、踊っているのが広瀬さんはともかく寺田、細田といった、本来大きな白鳥の方々。 大きな3羽の白鳥をカットしているがゆえの配役なのでしょうが、ゴージャスなこと! 滅多に見られないものを見ましたわ。 「小さな4羽の白鳥」とは違う、大きな4羽の白鳥ですが、こども版スペシャルですね。 というか、4羽の白鳥、大きさが変わるだけでこんなにも雰囲気が変わるのか…! 面白いことをしてきます、大原監督。

3幕の道化、客席から自然と拍手が起こります。 やっぱりアキミツ君のすごさはお子様だってわかる。

スペインの男性、林田&宝満がまあ色っぽいこと! 林田君はやはりここのところ何か吹っ切れたように楽しそうで、とってもいい味わいです。 宝満君は実はセクシーですよね。 もう少し出番があればいいのに、もったいない。 身長も足の長さも見栄えがするし、日本でこんなスペイン男性が見られるなんて、いい時代が来たもんです(笑)

ナポリは最近絶賛売り出し中の木下君。 彼も軽やかで演技力もあるし、見ていて楽しいダンサー君です。 どっか愛嬌がありますね、彼は。 人を楽しくさせる魅力があるようです。

ロットバルトが貝川さんですが、この白鳥、マリインスキーでやってる版を踏襲しているなら、メイクも特殊メイクにすればいいのになぁといつも思います。 貝川さん、お顔が悪人じゃないから、3幕が怖くないんですよね(下手すりゃ笑っちゃう)。 アラジンのジーンであれだけ正体不明のメイクをする技術がスタッフさんにはあるんでしょうし、ロットバルトもスメカロフ張りに盛ったらどうだいって思うんですが…。

して3幕の王子のヴァリもこの日の雄大君はここしばらくのなかでも出色の出来かなと。 やはり最初にスポットが当たるのが王子なだけに、演技含め存在感がすごくある。 王子の物語なんじゃないかと思ったくらいです。 動きも滞空時間長いし、動きは柔らかいし、しかも着地は猫のように無音。 どこまで進化するんでしょうね、この人は。

4幕、絶望の中でも王子を許し、力尽きるオデット。 きりっと悪魔に挑む王子。 この辺りのバトルはもちろん、また悪魔がちゃんと崖から落ちて死に、消滅の閃光まで放たれるから本版よりわかりやすい。 こういうところがちゃんとしているだけで、全然満足度が違いますね。

しかしキャスト表、こども白鳥とはいえ、せめて4羽の白鳥、スペイン、ナポリくらいは出してほしいもんです。

午後の部はまた別途。