arT’vel -Review- : art × Travel/旅×アート レビュー

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

宝塚雪組「カラマーゾフの兄弟」:ドストエフスキーも驚愕!?

いや、私も驚きましたわ!
まさか宝塚であのロシアの文豪の、しかもめちゃくちゃややこしい「カラマーゾフの兄弟」をやるなんて…!!
草葉の陰でドストエフスキー御大も、さぞや驚愕されていることでしょう。
芝居やバレエはあったけど、まさか女ばっかの劇団のミュージカルなんて、誰が想像しただろう(^_^;)

でも「三銃士」同様「カラマーゾフ」と聞くと黙っていられない私は見るのである。
元々ヅカに抵抗はないし、好きだし、舞台(^_^;)
てかリアル公演を見損ねたので、この舞台のためにわざわざCATVのヅカチャンネルに加入しましたさ(どーん)!
文句あっか<(`^´)>
1カ月のみの契約とはいえ、今月はヅカ三昧だそ!

それはともかく。
あの小説「カラマーゾフの兄弟」はやたら長ったらしい上にややこしいところに、計算されつくした仕掛けが山ほど潜んでいる。
本来純粋な三男・アリョーシャを主人公として、帝政ロシア末期から社会主義ソヴィエトの到来を予言するようなストーリーになるはずだったのですが、作者が亡くなり未完となってしまった超大作です。
さぞや無念であったでしょう、ドストエフスキー先生も…。

未完ゆえ、三男アリョーシャの存在感は一見薄く、激情の長男ドミトリー、あるいは無神論者の次男・イワンが主人公ぽく見えてしまう、なかなか物語の真意が伝わりにくい小説でもあります。
もちろん二度、三度、四度…と、何度も読むほどに主人公は確かにアリョーシャであり、また彼が愛おしく思え、そして「カラマーゾフ万歳!」と叫びたくなるのですが、それはあくまでこの物語の沈殿部分。

上澄み部分は激情の長男・ドミトリーとエロ実父・フョードルの、一人の娼婦と金を巡っての確執。
父親殺しの冤罪をかぶせられたドミトリーの話を軸に、三兄弟のアイデンティティを描きだすというストーリーなんですな。

そんなわけでこのヅカ版カラマーゾフもドミトリーを主人公に据えたいわば「上澄み版」。
ドミトリーと娼婦グルーシェンカの愛を中心に据えた愛憎劇です。
だがこの「カラマーゾフの上澄み」たるメロドラマは今ならワイドショーが飛びつき毎日何かしら放送するような内容でもあるので、そういう意味では確かにヅカならいけるだろうさ、とちょっと納得しました(^_^;)

まあどうなるかと思ってましたが、完全ドミトリー主人公視点で、彼の母親や淋しい子供時代なんかにもスポットを当てて、結構頑張ってましたよ。
まあ痒いっていえばそんな部分もない訳じゃない…ってかあるけど、でもこれはこれ。
詰め込み過ぎ??というところは感じましたが、努力には敬意を表します。
失恋とアル中ゆえに登場するイワンの幻影は、私は背景を知っているからすんなり理解できたけど、初めて「カラマーゾフ」そのものに触れる人にはどうだったんだろうとは思いますが。

でもあのややこしいストーリーの舞台展開は見事ですよ。
よい流れです。
頑張ったなぁ、ホント。
できればイワン錯乱&法廷乱入のシーンでアリョーシャにも乱入していただき「違う! あなたじゃない!」と叫んでいただきたかったですが(^_^;)
「あなたじゃないんだ! 兄さんっ!(悲痛)」
萌え~~vv
アリョーシャ、かわいいよアリョーシャ(ヱ?)
また農民たちを登場させ、あの時代の社会を語ったんだったらドミトリーの冤罪についても「農民達が意地を通したのさ」と言ってほしかったかも…。
でも多くは望むまい。

またスメルジャコフを「哀れな美男」にしただけでああも見方が変わるものか。
この点は虹色バラ色夢舞台のヅカゆえしょうがないのでしょうが。
むーん。

ちなみに主演は水夏希
ヅカ的にカコエエです。
フョードル役の未来優希がすげえエロオヤジ演技!
グルーシェンカの悪女っぷりといい、カテリーナの高慢ちきっぷりといい、「そういやこの話はどいつもこいつもしゃーねー奴ばっかだった」と思い出させるイヤラシサがありました。

まあ、そんなわけで。
ヅカだから。
でも久々にあの三兄弟のことを思い出せて楽しかったです。
ええ、カラマーゾフはキャラ萌えでこそ楽しいのよ(*^^)v

ラストのレビューはロシア民謡メドレー(^_^;)
ええ、ヅカですもの。
やっぱりコレがなくちゃね~(*´∀`*)
というわけで、これはこれでめちゃくちゃ楽しめました。
再演あったら今度は生で見たいものだ。
舞台はやっぱり生で、その場の息吹を感じてこそ楽しいよ。

その一方で。
かっこいいロシア人あるいはちゃんと男性が演じてくれるカラマーゾフも見たくなった…。
エイフマンのバレエ「カラマーゾフ」はちゃんとアリョーシャ視点のすごい作品だったんですが、また来てくれないかなぁエイフマン…・゚・(つД`)・゚・