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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

清里フィールドバレエ「ジゼル」:リアルな森の中の夢幻舞台

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夏の野外バレエ、清里フィールドバレエ、7月31日の小野&福岡組を観てきました。 本物の森を背景とした野外ステージでのバレエで、「ジゼル」ときたらそれは観たい。 しかも主演が小野絢子&福岡雄大ならクオリティに絶対間違いはない、と思い平日ではありましたが無理矢理行ってきたのですが、森の中の絢子姫は本当にウィリそのもので、感涙ものの舞台でした。 ジゼルはこれまでにも何度も観てきましたが、間違いなく絢子姫のジゼルは絶品です。

ただ清里フィールドバレエは野外であるだけに、また夏の高原ですからお天気に左右されることがままあり、その分非常にリスキーではありますし、私も過去足を運んだものの、中止となったこともありました。 今回も初日から3日間雨で中止、30日はようやくできたものの、霧がかかっていたそうです。 でも実行委員長の舩木さんが「屋根を付けると箱の劇場に近づいてしまう」という通り、屋根を付けるとこのフィールドバレエは全然意味がないのです。 この野外というやり方にこだわる主催側の意図するところはとてもよくわかりますし、バブルが弾けて観光地として一度は壊滅してしまった清里が心機一転、地元の方々を対象とした「本物の文化に触れる機会の創造」を掲げ、やり直そうと取り組んだものの一つがフィールドバレエであればこそ、やはりその「地元主体」の取り組みを応援したいと思うのです。

果たして7月31日も、日中はすばらしいお天気だったのですが、やはり夜に雷雲がやってきて、1幕は小雨で寸断もあり、雷鳴&雷光のなかの舞台ではありました。 しかしダンサーさんたちやスタッフの方々、客席の祈りが通じたのか、2幕は無事に終わり、雷雲も去っていったという奇跡のような日でした。 雷鳴&雷光が低く響く中での舞台はスリリングでしたが、時折それが思いも寄らない舞台効果となり、もうおそらくこういう舞台は二度と観られないだろうという、そんな印象深いものにもなりました。

■雷鳴轟くなかの自然が演出する舞台効果

清里フィールドバレエは総監督に今村先生&川口ゆり子先生を中心としたシャンブルウエストの方々が舞台を勤めますが、この日のキャストは主演が小野絢子&福岡雄大の新国ペアに、ヒラリオンがシャンブルウウエスト&新国の先生でもある吉本さんという、かなりうれしいものでした。

吉本さんのヒラリオン、よいです。 朴訥な森番で、キジ持ってジゼル宅へ。 この今村先生のバージョンは朝の風景から始まり、お母さんがちゃんと受け取ります。 ……娘落とすならママからか(笑)

一幕の絢子姫と雄大君のキャッキャラブラブっぷりは新国でもごちそうさま状態でしたが、このリアル森での開放感あふれるラブラブっぷりもおなかいっぱいというか何というか(笑) かわいいんですわ、とにかく、絢子姫が。 村人たちの祭りでは清里名物の花火が打ちあがり、特別感も満載です。 奥田慎也君のウィルフリードがいいです。 主と従者、という感じですが、必死に主に仕えるウィルフリード。 この役は踊りこそないですが、演じ方一つで存在感と深みが非常に増しますね。

そしてこの辺りから雲行きが怪しくなり、雨に降られて中断となったのですが、中断開けは雷鳴、時々雷光。 なんと狂乱の場面で雷光が厚い雲を通して光り始め、すごい演出となってきます、自然の。 雷様も絢子姫の舞台が観たかったのかw

お天気に不安を残しながらの2幕は、しかし清里ジゼルの真骨頂といえるものでした。

舞台でも森の中の舞台がリアルに森です。 このバージョンは冒頭墓場で墓守り達が酒を酌み交わし、そこへヒラリオンがジゼルの墓を探しにやってくる、という演出。 ヒラリオンが人魂で驚くシーンでまた雷光という、すさまじく恐ろしい演出にw 怖えぇぇっ!と思わず声が出てしまいました。

そしていよいよミルタの登場なんですが、ここは箱劇場と違って背面も空間で、その後ろが森なんです。 ミルタは舞台中央の背面の森から、青白いライトの光とともに現れるのですね。 ここでまた雷鳴とか、怖すぎる。 そしてウィリ達も次々と舞台中央から現れるのですが、これが実に幻想的。 箱の舞台ですと登場は基本的に左右しかありませんから、正面から出て規定ポジションに着くまでの動きと演出は、空間の広がりに独特感が出て非常に印象的です。 素晴らしいです。

そしていよいよウィリとなった絢子姫、本気で浮いてます。 新国で5cm浮いてたとしたら、この日は10cm浮いてた。 足音ゼロ、浮遊感炸裂でもう、観ていて目頭熱くなりました。 泣けますよ、これ。

ジゼルとしていっそう深化した絢子姫。 リアルに森の中で綴られるドラマ。 舞台背面のライト沼に突き落とされるヒラリオンの哀れさとドラマチックさ。 アルブレヒトを必死に救うジゼルのひたむきさとともに、いつの間にか雷鳴も雷光も止み、お話は終幕。 天を味方に付けたかのような、フィールドバレエならではの舞台でした。

終演後は恒例の500円で色紙を買ってのサイン会。 ダンサーさん、終演後でお疲れで、身体が冷えそうななかでサイン会に参加していただいてありがたい限りです。 吉本先生に2幕の雷効果の話をしたら「全然気づかなかった」とのこと。 舞台に出ているダンサーさんたちの集中っぷりを、改めて感じました。 そして今回初めてフィールドバレエを観た友人はすっかり絢子姫のファンになったようで、サインをいただいた色紙を眺めながら「また来年も誘って!」と終始ニコニコ顔でありました。 よかった、バレエファン増やせた(笑)

最後に実行委員長とお話したところ、来年は「白鳥と何か、かなぁ」ということ。 フィールドバレエは白いバレエが非常に人気が高いようで、でも舞台効果を思うと、確かにそうだなと思います。 なにより清里の白鳥は本当にドラマチックです。 また再来年は記念すべき第30回ということで、そちらに向けても何か考えているそうです。 楽しみですね。

地元の方による手弁当から始まったフィールドバレエ、都内から素晴らしい舞台のためにお邪魔させていただいている者は、こうしてブログなどを通して応援させていただきつつ、また来年も素晴らしい舞台が観られればいいなぁと思います。 また今回雨で中止になってしまった回が多かったのですが、どうかぜひ、来年リベンジしてください。 それだけの価値はあると、断言します。

最後に、昨年火事で焼けたロックがしっかり復活しておりました。 ソーセージもビールも美味しかったです。 ごちそうさまでした。