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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ:「ドン・キホーテ」を前に、厚地王子のことを

出張前だったから、6月のアタマ、もう半月ほど前でしょうか、新国立劇場バレエ団の厚地康雄君が退団し、古巣のバーミンガム・ロイヤル・バレエ(BRB)に戻るというニュースが飛び込んできたのは…。

思えば「厚地康雄」というダンサーを初めて強烈に意識したのはあの2011年8月の、オールニッポン・バレエ・ガラでした。
厚地君が佐久間奈緒さんと踊った「二羽の鳩」は、パ・ド・ドゥの部分だけだったにもかかわらず、このペアにはストーリーとドラマがにじみ出てくるようで、この2人の踊りで会場の空気が変わったのを覚えています。
同時に「私が観たかった日本人の男の子ダンサーかも!」という、本当に強烈な衝撃を受けました。

新国にいたっけ?どうだっけ?なんて曖昧な記憶をたどるより何より、終演後に震災チャリティの募金箱を持って並ぶ厚地君に突進したのも、私的には滅多にないことです。
「素敵でした!これからも頑張ってください」って声をかけたら、びっくりしたような顔されたのも印象的でしたが(笑)

ともかく厚地君、ビントレーさんに請われて新国へ来た人ですから、ビントレーさんの来期終了後の退任とともに帰ってしまうだろうとは思ってはいましたが、それにしたって1年早かった。
心の準備も何もできていないどころか、「来期の白鳥は小野さんと踊ってほしい」なんてマジで思ってましたから、結構久々に呆然とする、アタマが真っ白になるような衝撃でしたね(苦笑)

退団・古巣へ戻る理由は公式コメントが出てないのでなんともわかりませんが。

新国での公演後の厚地君のスケジュールは、お教室での王子様ヘルプがずらり。
そうか、新国で踊る以外は「お教室の王子様」だったんだなぁ……とか思っちゃったりしましたね。

そういえば先日のチャコットのダンスキューブに載ってたビントレーさんのインタビューでも、「日本はプロカンパニーの公演数が圧倒的に少ない」とありましたし。
BRBは「アラジン」を6週間で37回、「アラジン」の元祖・日本は6年間でたった12回。
この数字を見るだけで、日本と英国、「プロの舞台に立つ機会」がどれだけ違うかは想像はつきます。

つまり、日本にいれば真ん中で主役を踊る機会はあっても、「プロの舞台」に立つ機会は全然少ない。
それ以外は「お教室の王子様」になってしまうのかも。
てか、そうしないと日本ではバレエでは喰っていけないのか…。

もちろん私も姪っ子のお教室の発表会にも行きますし、これはこれで楽しんで見ています。
それにこのたくさんのお教室が日本のバレエを支えているわけでもありますし。
やっぱりプロのバレエ団の男性ダンサーが出てくると締まりますし、よくやってくれるなぁ、お疲れ様です、ご苦労さまです、ありがとうございましたと、本当に頭が下がります。

でも、お教室はやっぱりお教室であって、プロの舞台とは違います、当然ながら、言うまでもなく。

日本で踊るか世界で踊るかは人それぞれに合うやり方があると思いますが、世界で成功したいと思い、そして世界の舞台に出ていく道が目の前にあるのなら、その道に敢えて「戻る」のも、選択肢の一つなのかもしれませんね。


もちろん、何度もいいますがBRBに戻る本当の理由はわかりません。
「お教室の王子様」としてお座敷がかかるのは、これはこれで見方を変えると、やはり恵まれたことともいえますし。

結局どういう立場で踊り、上を目指すか、なのかもです。


ただ、ファンとしては厚地君の踊りをワクワクしながら見ることができなくなるのは本当に残念至極ですし、もちろん今の新国バレエは大好きなのですが、それでも「これから何を楽しみに新国に通えばいいんだ」なんて思いまで湧き出して、マジで泣きそうな気持ちになってましたが。
その一方で、やはり厚地君には「お教室の王子様」ではなく「世界の王子様」を目指してほしいと、心の底から切に思うのです。

今年1月のキエフ・バレエの新春ガラで吉田都さんのお相手として「眠れる森の美女」のデジレ王子を踊った厚地君は、並み居るスラヴな方々のなかにあっても全然遜色のない王子っぷりでした。
個人的に、やはり厚地君は「世界の舞台で白い王子を踊る日本人ダンサー」という可能性に、近い場所にいると思います。
もちろんまだパーフェクトではないけれど、でもそういう未来と可能性があるなら、存分にそれを目指してほしいと思います。


語りだせば切りがないのですが、とにかく「新国立劇場バレエ団・ファーストソリスト 厚地康雄」のファイナル・ステージを含む「ドン・キホーテ」が明日から始まります。
明日22日は湯川さんとのペアで3幕のボレロ
29日が全幕ファイナル、実質上30日の3幕のボレロが本当に新国での(ひとまず)ラストになります。
しっかり、焼き付けてこようと思います。