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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

「エオンナガタ」:ありとあらゆるものに境目はなく

シルヴィ・ギエム、ロベール・ルパージュ、ラッセル・マリファントの「エオンナガタ」を観てきました。
衣装は、故アレキサンダー・マックイーン
ギエムさん、「ボレロ」日本ツアーお疲れ様でした。

まずは、これから出かけて観る方は、事前にネットなどで「エオンの騎士」「シュヴァリエ・デオン」などを検索して、この人物の生涯を頭に入れておくといいと思います。
または早めに行ってパンフレットをじっくり読むなど。

というのも字幕が使われるので、そこに気を取られるとどうしても舞台を十分に観られませんので。
話は「シュヴァリエ・デオン」の生涯ですから、それを抑えておけば筋は分かります。
また字幕はほとんどパンフレットに掲載されているので、それを読めば取りこぼしても後で補完できますから。

また、作品的には一口で言えば、ギエムのいうところの「ダンス・スペクタクル」。
ルパージュが絡んでいるので、演劇系のダンスだろうとは思っていましたが、確かに「ダンスもある演劇」というか。
ギエムの、純粋に「バレエ作品」を期待している方は、間違いなく大ハズレです。

でも「パフォーマー」としての、ギエムのもう一つの側面を観ると言うところでは、とても面白いし、興味深いものでした。



ストーリーは今なら両性具有の、エオンの騎士、シャルル・ジュヌヴィエーヴ・ルイ・オーギュスト・アンドレティモテ・デオン・ド・ボーモンの物語。
ルイ15世から16世、フランス革命の時代を経て
ルイ15世のスパイであり、また「2つの性を持つ」ゆえに奇異の目にさらされ英国に追放され、80歳くらいまで生きた人物。

男か女か。
何者だったのか。

あらゆる肉体的な「人間」が詰ったこの人物を3人の人間が入れ替わり立ち替わり演じます。

随所に和装や着物などが使われ、剣も僧坊の棒術を思わせるところがあり、またライト使いが非常に効果的で巧みで、空間が目まぐるしく広がり、縮む。
コメディを取り入れたり、ギエムに歌わせたり(苦笑)と、さまざまな要素がてんこ盛り。
3人の出演者がそれぞれに「いい!」と思ったアイディアを出し、それを繋げて行った、とパンフレットにはありましたが、ナルホド。

だからこそのちぐはぐさであり、今となってはそれが「エオン」という、両性併せ持つ人間像を表現するにはぴったりだったのかもしれないとも思います。

てか、これだけちぐはぐな要素を繋げ合わせたルパージュもご苦労様ですが、だからこその中途半端さは、やはり否めませぬ。
和装着物小道具を使うなら、もっと最後まで使い通せよ、とは以前カナダいうかケベックでルパージュの舞台を観た時にも思ったのですが、やっぱり今回も思ってしまった。
おもちゃ箱が最後までひっくり返ったままだったかなぁ…という印象でしょうか。
その俗っぽさがルパージュだと言えばそうなんですが、だとすれば、やっぱりこの人とはあまり相性はよくないかなぁ、自分。

とはいえ、ギエムののびやかな肢体は、やはり圧倒されます。
ルパージュが踊ると聞いて、どうよ…とは思っていましたが、マリファント、ギエムにそれなりに付いて行けてるところにはびっくり。

この妙な3人のコラボに光の効果、チェンバロや和太鼓、現代音楽のよろず組み合わせは、何かを表現しようとするときに、垣根はないのだということを、改めて思わせられました。

というか、ギエム、表現者として、こんな遊び心もあるのだなぁというところが、新鮮でしたよ。
バレエだけに捕らわれない、パフォーマーなのだと、改めて思いました。