arT’vel -Review- : art × Travel/旅×アート レビュー

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

マリインスキー・バレエ団「ロミオとジュリエット」(2):マカロワ様ご降臨で最高の舞台

マリインスキー・バレエ団ロミオとジュリエット、12月2日の回です。 ド平日のマチネでしたが、スメカロフのティボルトを見に出かけていきました(笑)

先の(1)にも書いたように、この日はナタリア・マカロワさんのお誕生会というイベントがありました。 会場内にはマカロワさんの写真が展示されています。 彼女のお誕生会をやるとはネットで見て知ってましたが、開演前に芸術監督から「今日の舞台をマカロワさんに捧げます」との挨拶。

そして舞台が始まるんですが、この日のロミジュリが一番オケも綺麗だったんじゃないだろうか。 この音楽は実にドラマチックだなぁと思うのですが、マリ管とあって一層染みいります。 主演はシャプリナ&アスケロフ(リアルカップルかと思ったらやはりそうだったという)。 ロミオ登場時の振りや立ち位置が違うのは、これはダンサーさん次第なのね。 ずいぶん自由度高い。 だからこそ、ダンサーさんの解釈や演技力、表現力が試される舞台なんだなぁと改めて思います。

アスケロフがやはり前回のスチョーピンより妙に存在感があるからか、この日のスメカロフのティボルトも一層大ドラ息子で演技ででかい。 というか、やはりマカロワ様がいらっしゃるということで、舞台にみなぎる熱気と気合いが一層パワフルです。

夜会でジュリエットに言い寄るロミオを発見し、しかしジュリエットパパに止められるティボルト、怒りのあまり剣をヒュンヒュン!としならせて迫力満点。 身体に「ティボルト」が染みついてる。 ティボルトってほとんど踊るところはないのに、身のこなしや動きはやはりダンサーです。

そしてやはり剣士であり騎士、ティボルト。 セルゲイエフのマキューシオがこの日はこれまた一層軽快で、小憎らしいほど。 これはティボルト切れるわ(笑)←視点が完全ティボルト中心 前回も思ったんですが、このVSマキューシオが始まる前に、長い手足と大きな身体を存分にピッと(しかし優雅に)のばして剣を頭上に掲げる臨戦前のこのポーズが堪らんのです。 多分このポーズが、スメカロフ的こだわりであり、おそらく美学といえるものなんでしょうね。 焼き付いて離れませんね。

そしてこの間とひと呼吸。 瞬時に始まる電光石火のチャンバラ。 …しびれるわ。

ティボルトを刺し、ロミオが切れ、しかしこの回はビンタというよりどつきとばされる感じ。 この間がやはり人によって違うのねぇ。 相手の呼吸を読むって大事。 そしてみなさん、それぞれの呼吸の間がすごくいい。 カンパニーの雰囲気…というかダンサーさん同士のコミュニケーションがいいんだろうな。 新国(新国立劇場バレエ団)を見てても思うけど、踊りに加え演技が生き生きとして、舞台上すべての登場人物が呼吸をしているようなバレエ団って、やっぱり舞台を見てて「ダンサー同士の雰囲気いいんだろうな」って感じが伝わってきます。 (逆に風通しが悪いのも、そのどんより感が伝わってくるんですよね。そういうところは大体演技含めて相対的にまとまり感がないし)

そしてまた派手に殺されるティボルト。 バウンドしてます、床で。 ああああホントに痛そう…。 そしてやはり「後は任せた」というオーラとともに戸板で運ばれ、最高に盛り上がった状態で、次の3幕へ。

アスケロフのロミオはダイナミックで大きい。 ごろごろのたうち回ってジュリエットを偲んでいます。 やりすぎかってくらい(笑) 死に際も美しく、2人の重なり具合がいい角度で実に美しいラストです。

カーテンコールでマカロワさんが登場し、涙声で「最高のプレゼントだった」とお礼の弁。 いやいや、こちらこそ…といいますか、マカロワさんがいてこそのこの熱のこもった舞台を見せていただいて、本当に感謝しきりです。

次はスメカロフのロットバルトと、ロパ様最後(であろう)白鳥全幕、マチソワ。 ……いろいろ思うところがありすぎた1日でございました。

追記: 余談ですが。 マリインスキー公演と時期をほぼ同じくして、シゴトでほぼ毎日こんな写真(↓)を山ほど眺めておりました。

[caption id="attachment_279" align="alignleft" width="400"]セルギエフ・ポサード。ロシア正教の重要な地のひとつ セルギエフ・ポサード。ロシア正教の重要な地のひとつ[/caption]

[caption id="attachment_280" align="alignleft" width="400"]ウグリチにある地の上の聖ドミトリー教会。「ボリス・ゴドノフ」の舞台でもあったり。 ウグリチにある血の上の聖ドミトリー教会。「ボリス・ゴドノフ」の舞台でもあったり。[/caption]

普通にこういうのがにょきにょきと建ってる国です。 サンクトペテルブルクは西欧化された町ではありますが、ロシアのロシアらしい色彩って、大体こんな感じ。

ロミジュリのティボルトにしても、「愛の伝説」、はたまた以前TV放送のあった「シンデレラ」にしても、あの原色甚だしい極彩色の嵐は、ロシア人の感性によるところも多分にあるのではなかろうかと思った次第です。 やっぱり雪深い国にいると、色彩が恋しくなるんでしょうかね。