arT’vel -Review- : art × Travel/旅×アート レビュー

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

ウィーン(4)カールス教会:天井にまします精霊

ウィーンよりあっという間の帰国。
現地でピタリと治まっていた花粉症が、帰国したとたんに復活しました(@_@)
しかも行く前よりひどくなってる感じ…。

で、ウィーンルポの続きです。
今回はカールス教会での、またとないスリリングな、しかし滅多に見られないものを間近に拝めるというすごい体験です。


つまり高さ62mの教会ドームのてっぺん近くまで登れるうえ、丸天井に描かれたフレスコ画を、とてつもない至近距離で見られるわけです。

フレスコ画を描いたのはミヒャエル・ロットマイヤー。
ザルツブルグ司教館の天井画も描いている、当代きっての有名画家です。
たまたま昨年から天井画の修復をしているようで、そのために足場があるようなのですが、それにしても丸天井の壁画なんて、普段は下からどんなに見上げても、オペラグラスでもない限り「なんか描いてあるなぁ」という感じでしか見られないでしょう。
それが手を伸ばせば届くような距離にあるわけです。
すごいですよ、これは。

このカールス教会は18世紀、ペストの鎮静化を祈願して建てられた、ウィーンでも傑作と言われる壮大なバロック建築の建物です。
丸いドームはどことなくドレスデンのフラウエン教会(聖母教会)を思い出させてくれます。
ドレスデンのは石のドームですが、こちらは青銅張りの屋根。
目指す天井のフレスコ画はこのドームの内側に描かれています。

まずは教会内にあるリフトで32mのところまで登ります。
リフトは6ユーロ。
降りるとその先は階段…というか、足場(^_^;)
もちろん、落ちないようにアクリル板の壁がありますが、それにしたって揺れるし、高いし、足場の上だか下だかで人が昇降するたびにその振動が響いてくるわけです。

足場を登る途中に見られるのがマリア様の昇天、そして天上の聖なる父と子。


フレスコ画が間近に見えるのはそれはもう、感動的なのですが、その高さを思うともう、とても下なんか見られません((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル


すくむ足を必死に動かし、へっぴり腰になりながら手すりにしがみつくように登った頂上、つまりドーム天井の最上部には精霊なる鳩がおわします。


いやもう、ここまで来ると感動ものです。
この天井画を描いたロットマイヤーもここまで登ったのでしょうか??
それとも組み上げる前の石に描いたのか(まさか…)。
こんな高所で、おそらく今の足場よりももろく、危うい状態で、ひたすらに信仰の思いが導くままに、一心不乱に筆を繰ったのでしょうか。
修復家もここまで登って、芸術の保存、人類の宝の保存のために作業をしているのでしょうか。
淡い水彩画のように、しかし美しく修復されたひと筆ひと筆に、ただただ頭が下がる思いです。

果たしてこの“アトラクション”、いつまであるのかわかりませんが、直近でウィーンに行かれる方は、ぜひカールス教会にお寄りください。
リフト代6ユーロは壁画の修復費用です。
ただ、もう本当に、どうしようもなく高所恐怖症の方には、敢えてお勧めはしません…が、それでも、見る価値あり、です。
(実は私は高所恐怖症…。リフトなら安心、と思っていたのが甘かった(T_T) いや、分かっていても登ったと思いますが(^_^;))