arT’vel -Review- : art × Travel/旅×アート レビュー

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ団「Dance To The Futur ~Second Steps~」:とにかく続けてほしい

メモだけつくってアップできなかったのですが、今更的に放出しておきます(^_^;)

12月7日(土)、新国立劇場バレエ団「Dance To The Futur ~Second Steps~」を見てきました。
新国ダンサーが振り付けた作品を新国のダンサーが踊るという試み。
「Second」とあるように、昨年First Stepsがあったのですが、上演日が平日の夕方という「一体誰に観てほしいんだ!?」という日程で憮然としていたのですが、今回は土日2回。
しかも小劇場とあって、ジ・アトレ会員申し込み期間でありながら残席僅少という状態でした。

見終わった感想は、まずは「とにかく、ずっと続けてほしい」です。

そして新国ならではの小作品、またまだまだ遠いことかもしれないけど、将来的には新国ダンサーによる全幕改訂版上演とか全幕ものの新作とか、そういうものが生まれるようになればいい。
そしてオープニングガラとかクロージングガラといった公演も増やして、発表の場を設けてほしいと思います。
今回発表された作品のなかには、そういう場に出してもなんら遜色ないものが実際にありました。

特によかったのが貝川さんの振りつけた作品「フォリア」。
踊りはもとより、音楽、照明含めた舞台空間が本当に心地の良い作品。
小劇場でダンサーとの距離が近いせいか、静、動、緩急、閃光のような鋭さという空気の動きも伝わってくる。
無音のなかで伸びやかに踊る小野さんは本当に美しいし、彼女が現れ、動き、踊るだけで惹き付けられます。
そこに堀口さん、福岡君、輪島君等々5人のダンサーが加わり「抑えた熱さ」、青白い煌めきみたいなものが一つから二つ、三つと増えていくよう。
そこをキレッキレの福岡君がシュッと音がするかのように空気を切り裂いていくのが爽快です。

さらに計算されたのか、偶然なのか。
終盤、ライトで踊り手の影が背景に映るんですが、それが6人+αの登場人物のように効果的。
影では一番下手奥にいる人と、上手にいる人の距離がぐっと近づき全員が輪になって踊っているようです。
小劇場だからこうなったのか、中劇場だったらどうなるんだろうと思えど、小劇場だからこその宇宙空間のようでこの瞬間はとても感動しました。

「振り付けするならいろいろ踊らないといけない」というのは「舞姫テレプシコーラ)」の受け売りですが、貝川さんも今までいろいろ踊ってきた積み重ねがこういう形で生きて、今後新国のために生かされるなら喜ばしいことだし、新国を観てきたファンにとってもダンサーやバレエ団の長い目で観た(観てきた)成長が感じられてうれしいことだと思います。


せっかくだから全作品の印象を。

「SWAN」:マイレン・トレウバエフ
男性版瀕死の白鳥…をイメージしたのか。
小野寺君の動きが柔らかくて表情豊か。
普段後ろで踊っている人たちの姿をこうしてみられるのも、この公演のいいところです。

Springs」:広瀬碧
春をイメージした作品で男女の2カップルが踊るかわいらしい雰囲気。

「Calma」:今井菜穂
自身で振り付け自身で踊る作品。
がんじがらめの心を牢獄ライトで表すのは直球どストレート過ぎて気恥ずかしい感じがしないでもないけど、内面を表現しようとした意図は伝わります。

「Chemical Reaction」:小笠原真
サイケでギラギラ衣装で音楽がU2
確かにChemical…か?
エネルギッシュな作品で、湯川さんの存在感がすごかった。

「ONE」:宝満直也
閉ざされた空間、閉ざされた世界であがく心が片隅の丸いライトで表現されている。
彼はマイムや動きがおもしろいし、いろいろ研究してあれこれやってみようという意欲が感じられます。
踊りもさることながら、「振り付け」に対するとても前向きでアグレッシブな意欲が伝わってくる。
何かを感じたらすぐ動きや踊りになるような、そんなダンサーであり振り付け家の卵というのか。
こういう子達のためにも、この企画はずっと続けてほしいと思います。

「The Celebrities, Part VI: The Post, Break-Up Depression of the Baroque Peacocks(バロック孔雀の乖離後の憂鬱)」:アンダーシュ・ハンマル
黒チュチュにハーフパンツ(?)のような衣装が可愛かった。
でもダンサーは丸尾&大和のお姉さま2人に仔わんこ奥村くんという、なかなかおもしろい組み合わせ。
抽象的な孔雀…なのか、幾何学的というのか、ブラックとかカンディンスキーの絵をなぜか思い出しました。
やはりスウェーデン人のハンマル君の感性の独特さも感じられてなかなか興味深かったです。

「珠とピンとボクら…。」:宝満直也
宝満君の2作目。
バレエ漫才というか、バレエコメディというのか。
ボーリングのピンの反乱(笑)?
衣装が奇抜キテレツなのだが、2人の動きが生き生きぴったりで小気味のいい作品。
本当に、あれこれいろいろやってみたい、今まさに模索中という感じで、やはり楽しみに見守っていきたい子であります。

「Side Effect」:福田圭吾
貝川さんの作品と並んで、個人的にはとても印象に残った作品の一つ。
いわゆるコンテンポラリーらしいコンテンポラリー作品というのか。
福田君が大阪で所属しているケイ・バレエスタジオの作品を今夏観る機会があったけど、そこでの経験や蓄積が(も)すごく発揮されているなぁと思いました。
動きがスピーディーでエネルギッシュ。
踊るのがこれまた福田、八幡、高橋という男性3人に女性で五月女さんが1人混ざっているのだけど、彼女がまたすごい。
男性に全然負けないキレとシャープな動きで、小さくてピチピチでキレッキレ。
彼女はすごい子だ。

というわけで。
貝川さん、福田君と系統の違う2作品があるっていうのはすごく新国の将来にとってもおもしろいことだと思います。

ほんとに楽しめた「発表会」でした。
何度も言いますが、やはりぜひ、続けてほしいと思います。
そしてこういう作品を大舞台で発表する、ガラ公演とかも増えてくれればいいなと思います。