arT’vel -Review- : art × Travel/旅×アート レビュー

ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

新国立劇場バレエ団姫路公演「クラシック・バレエ・ハイライツ」

1月26日、新国立劇場バレエ団姫路公演「クラシック・バレエ・ハイライツ」に行ってきました、はるばる。
バレエに興味はあるけどなかなか観る機会がないという、地方在住の友達も観てくれることになったし、旅行もしたかったし、いい機会かと(笑)


そして実際行ってよかったです。
地方公演って、ご当地系の方々ってやっぱり注目されるんでしょうか。
公演前から関西の友人が新聞記事をこまめに送ってくれていたんですが(超ありがたや!多謝!)、関西出身のダンサーが何人、という感じで紹介されている。





また「関西の人間はご当地出身…と聞くとうれしくなる」と同じく友人の弁。

そうなんだー、と思って会場に出かけてみたら姫路出身の貝川さん宛にお花があったりして、なるほどと納得した次第です。

姫路公演は日曜日ということもあって、今回はいい感じで座席が埋まっていてまずは一安心です。
厚木並だったらどうしようかとビクビクしてたので(^_^;)
お客さんで会場が埋まっている公演は観ている方も安心します(厚木はいたたまれないというか切ないというか)。
集客っていうのは見に来るお客さんにとっても大事だと改めて思いました。

ともかく姫路はこういう機会だからバレエ観よう、という感じのお客さんも多いようで、東京での公演のようにビシバシとブラボーが飛ぶというわけではないのですが、でも暖かい拍手に包まれて、皆さん喜んでいるのが伝わってくる公演でした。

ダンサーさん達も公演自体も厚木の時のようなさざ波の立った感じはもうなく、通常運転。
よかったよかった。

小野さんはやはり降板でしたが、白鳥の代役が米沢唯ちゃんという、私的にはかなりうれしいラッキーです。
ただ唯ちゃん的には1部でパドカトルのグランを踊った後に、2部で白鳥ですから相当きつかったのではなかろうか。

パドカトルも厚木に続いて2度目ですが、これいい演目ですよね、新国には。
でも多分これって実は相当にハードですよね、踊る方は。
私は踊らない、踊ったことのない見る専ですが、グランフェッテみたいな派手さはないものの、地味に難しくて大変ではないかと、足の動きとかフォーメーションとかを観てて思います。
「優雅に泳いでいるようにみえる白鳥は水面下で必死に水をかいている」という話が浮かんでくるんですよねー。
新国の皆さんはこともなげに、また情感たっぷりに「4人のバレリーナの物語」を紡いでくれるので、ほぅ~っと引きこまれてしまいますけど。
こういう演目を旅公演でないと見られないのが残念ですが、でもよく上演してくれたなぁと思います。

姫路では一番若くて元気キャラのグランが米沢さん。
これはキャストを見た時からすごく楽しみで、それも見たくて姫路まで行ってしまったようなものなのですが、期待に違わず軽やかに、そして特にソロのクライマックスのところなんかをしれっと踊ってしまうからすごい。
ジゼルキャラの堀口グリジは動きが優雅です。
チェッリートは厚木でさいとうさんを見た時は「永遠のオンナノコ」という感じでしたが、細田さんはキュートで愛嬌もある感じ。
本島さんは貫禄ですね。

またこのパドカトル、ソロとソロの合間にタリオーニお姉様と一番若いグランが踊るといったいろいろな組み合わせの妙、そして続くダンサーをお出迎え、というシーンもあるわけですが、これがまたほんわかしているのかビミョーに火花が散っているのかという絶妙な空気が漂う感じで実に面白い。
そこを全てのダンサーさんを見守っているバレエ団のピアニスト、蛭崎さんの音楽が包み込むわけです。
4+1の、素敵なプログラムだなぁと改めて感じ入りました。

姫路出身の貝川さんの「アリアのための序曲」は、いわば故郷に錦を飾る作品といえましょうか。
大中小3人の男性の身長差が、改めて見るとスゴイし、酷な感じもしますが、でも同時にこれは大中小全ての体格の男子が参加できる作品でもあるわけですね。
そしてやっぱり私は吉本さんが好きだなぁと、これも改めて認識しました。

この「アリア」、厚木では音楽が切れて無音状態に入る間のところで拍手が起こってしまったんですが、姫路では少し修正してきたのでしょうか。
微妙に間が短くなった感じがしたんですが、でもそれもあって途中で拍手も起こらず、うまく後半の無音部分に繋がっていきました。
短い時間で修正を入れてきたのだとすれば、これは貝川さんのこだわりであり、作品への思いなのかな。

ドンキは寺田さん&奥村君にヴァリエーションは五月女&井倉さん。
寺田&奥村コンビは6月に見た時より落ち着いた感じがしたのは、ガラだからでしょうかね。
奥村君は相変わらずのキレと溌剌感だったのに加え、少し大人になった…というか、落ち着きが出てきた感じがしました。

2部の白鳥は王子が福岡君。
今だから言えば、厚木の時の福岡君はどうも集中しているのか散漫なのか、さざ波立ってて落ち着きがあるのかないのか、キレもあると思ったら低空飛行だったり、単に舞台が狭くて踊りづらいだけなのか…という感じで、いずれにしてもいつもの雄大君じゃない?と思っていたんですが。

この日は短い、出番の少ない王子ながらも、いつもの雄大君以上に雄大君。
濃いです、彼はやっぱり。
雄大節ってのがあるかもだ。
あんな短い出番なのに、濃ゆい王子を演じる福岡君にホッとしました。

唯ちゃんの白鳥、人とは違うものが見えているような視線で唯ワールドというのでしょうか。
鳥にされてしまったお姫様でもあり、鳥が人間の姿をしているお姫様でもあるような、不思議な空間です。

4羽の白鳥はキレイ。
新国のコールドもキレイですが新国の4羽の白鳥…というかこの旅公演の4羽の白鳥は本当に素晴らしいです。
若い五月女さんやベテランの大和お姉様がうまく噛み合って、揃いながらも一人ひとりに味が見えるし。
(必死なんでしょうけど)必死感もなく、優雅でキリッと締まっている。
大きな白鳥もダイナミックで本当に新国は層が厚いです。
そしてカーテンコールでロットバルトを踊った地元出身の貝川さんに大きな拍手が送られたのが、地方公演らしくて微笑ましかったです。

というわけで堪能した旅公演でした。
初新国の友人も「コール・ドがキレイだった!」と開口一番に言ってくれてうれしかったわ。
牡蠣も地元の味覚も食べまくりの、気ままな放浪もできたし、こういう旅公演を組んでくれた新国さんには素直に感謝です。
厚木も少なかったとはいえ、来てくれたお客様はすごく喜んでくれたし、姫路もバレエ少女たちが「すごい~!」「きれいー!」とコーフン気味でした。
こういう地方公演は、やはり少しずつでも続けていただきたいもんです。
そしてこういう楽しいガラは、新国立劇場でも組んでいただきたいと思います。

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