五島・長崎2010(2):エメラルドの海と素朴な祈りの場
今回の五島旅行の最大の目的は五島教会群訪問。
前から行きたいとずっと思っていたところだったのに加え、今、長崎県が「五島教会群」として世界遺産登録に動いていることもあり、また数年前からも旅行業界内で「アレはすごい」「一度見ておけ」と話題になってもいたんですよね。
実は結構話題の場所です。
でも個人で行こうと思うと結構大変で、五島の玄関、福江に到着するまでもう1日がかり。
なんせ長崎港から高速艇でも1時間半、お座敷フェリーで3時間。
さらに果たして五島に着いても、今度は島での足がない。
定期観光バスかレンタカーを使うしかないのですが、このレンタカーもなかなか曲者だと思いましたよ(^_^;)
というのも道がうねってカーブだらけ。
トンネルの中までカーブしていて出口が見えないって…(*_*)
「土地勘のない人の運転は結構危ない」というガイドさんの話もうなづけます。
ましてやペーパードライバーゆえのゴールド免許保持者なぞ、間違っても運転してはならないところなのは言うまでもなし。
ある意味ツアーでないとなかなか行きづらいところです。
で、当の五島の教会群は、明治の禁教令廃止とともに、まるで雨後のタケノコのように建てられ始めたカトリック教会で、その数、五島列島だけでなんと52。
しかも全て現役稼働中。
長崎県の教会が全部で131ですから、つまり長崎県内の教会の約4割が人口6万2000人程度の五島列島にあるわけです。
ちなみに日本全国にある教会の数は1023とのこと。
日本全国の教会のうち、1割ちょいが長崎県にあるということですから、この地がいかにカトリックと強い関係を持っているかがわかります。
五島は平たく言えば16世紀のキリスト教禁止令を逃れ移り住んできた人や、長崎大村藩の口減らし政策で島に渡ってきた人が切り開いてきた島です。
これでもか~!というほどうねうね入り組んだ海岸線に起伏の多い山々が今も昔のままに連なっており、山頂から見ると入り江が湖みたいです。
しかも海の透明度が非常に高く、港の護岸に張り付くイソギンチャクの色や形までくっきり見える。
浜辺はエメラルドグリーンですよ、この冬に。
エメラルドグリーンの海なんて、日本では南の、沖縄辺りでしか見られないと思っていたのに、まさか五島でも見られるとは…。
かなり感動的でした、この海。
この、今でさえもフェリーで3時間かかる海を、昔は櫓の船で渡ってきたわけですから、さぞや大変だったことでしょうなぁ…。
でもこの「大変さ」ゆえ、一度島へ渡ればほぼ閉鎖地域。
今でさえ、バスで巡っていてもすれ違う車も人もないほどです。
380余年も禁制とされていた信仰も、もちろん歴史上では弾圧などもありましたが、こんな場所だからこそ守り通すことができたのだと納得させられます。
今回のツアーでは五島の52の教会のうち、下車観光は4つ、車窓は3つですが、どれも個性的で、素朴。
そして「集落丸ごとカトリック」という依然続く生活のなかで、すごく大切にされているのがひしひしと伝わってきます。
欧州の教会はやはり社会秩序と権威の象徴でもあったゆえに、荘厳で美しいなかにどうしても「上から目線」が感じられるわけですが、この島の教会はどれもこれもが素朴な信仰の場。
西洋キリスト教の神を頂点に置くヒエラルヒー的概念とは明らかに違う、「神は常にわれらのそばにありき」という身近さが伝わってくるのが不思議。
三角形のヒエラルヒーと言うよりは、まるで神様が曼荼羅の宇宙概念の中にいるような立ち位置とでもいいますか。
とてもアジア的…というか日本的なメンタリティが感じられるカトリック教会なのですね。
380年余の間、パーデレなる神父がいなかったからこそ生まれた共同体の神様であり素朴さなのかもしれません。
世界遺産登録に向けて動いているこの五島の教会群ですが「(実生活の信仰の場ゆえ)複雑です」とはガイドさん。
知ってほしいし、世界に誇る観光素材→貴重な収入源である。
でも生活を荒らされたくない…というアンビバレンツな気持ちは痛いほどわかります。
果たしてこの教会群が世界遺産になるのがいいことなのか、どうなのか…。
また日本特有のディープな宗教の歴史が、外国の人達に理解されるものなのかどうか…。
教会建築やそれにまつわる世界遺産等々の話題はまた次回に送りますが、私的には「この静けさと素朴さこそが味わい」とも思います。
この透明な海共々。
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