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ライターKababon(旅行、旅行業、舞台芸術);旅と舞台(主にバレエ、音楽)についての覚え書き

ダンシング・ミュージカル「Les 3 Mousquetaires Le Spectacle」(1):フランス本家の「三銃士」ならではの説得力

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2016年10月21日(ソワレ)、23日(マチネ、ソワレ)でフランスはパリのパレ・ド・スポーツ(Palais du Sports)で開かれているミュージカル「Les 3 Mousquetaires Le Spectacle(三銃士)」を見に、パリに遠征してきました。

(※掲載写真は撮影OKだったためです。でも掲載数は控えます)

 

公式→http://www.les3mousquetaires-lespectacle.com/

 

  キャスト→http://www.les3mousquetaires-lespectacle.com/artiste ダルタニャン:オリヴィエ・ディオン(Olivier Dion)   アラミス:ダミアン・サルグ(Damien Sargue) アトス:ブラヒム・ザイバ(Brahim Zaibat) ポルトス;ダヴィッド・バン(David Bàn)   ミレディ:エムジ(Emji) アンヌ王妃:ヴィクトリア(Victoria) 公爵:ゴラン・ヨセフ(Golan Yosef) コンスタンス:ムガン(Megan) リシュリュー枢機卿:クリストフ・エロー(Christophe Héraut)   ジュサック:アントワーヌ・ルランデ(Antoine Lelandais) ルイ13世:ステファン・ムトロ(Stéphane Metro) プランシェ:ダヴィッド・アレクサンドル・デュプレ(David-Alexandre Després) ※キャスト順は公式準拠。カタカナ表記は曖昧です。訂正あればご連絡ください。

 

●本国だと腑に落ちる不思議(笑)

「Les 3 Mousquetaires(三銃士)」はフランスのアレクサンドル・デュマ原作の大衆小説で、直近ではBBCがテレビドラマ「マスケティアーズ」を制作していますね。

このほか各国映画や日本でもテレビアニメになっていますし、舞台ではオランダやチェコで制作され東京帝劇でも上演、日生でも2016年夏にいいものが作られ、韓国でもミュージカルが人気を博すなど、本国外ではいろいろ独特の脚色を加えて二次創作(笑)されています。

多分いろいろ(納得がいかない、あるいは物語を繋げるための)妄想の隙間が多い、それゆえ楽しめる作品というのもあるかもしれません。

 

しかし本国フランスの制作はあまり聞かないもので、それゆえ「やっときた本国版」ということで非常に楽しみにしておりました。

 

して本国版、二次創作メディアの数だけ脚色がある「三銃士」を非常にオーソドックスな内容で仕立てあげてきてちょっとびっくり。

衣装はフランスらしい、おしゃれでキッチュなセンス満載でとても良いです。

へそ曲がりで一筋縄ではいかないフランスですから、斜め上から攻めてくるかと思っていたので、その点は拍子抜けでしたが、しかし。

 

原作で腑に落ちなかった部分が、フランス人がやるとストンと落ちてくるという不思議。

これは本国の人たちならではのメンタリティでしょうか。

「そうか、そういうことか!」とビシバシ膝を打ちまくって帰ってきたという、非常に得るもののあった舞台でした。

 

●「ダンシング・ミュージカル」という見せ方

まずこのミュージカルは「ダンシング・ミュージカル」というサブタイトルが付いています。

つまり踊りと歌を併用しての表現で、アンサンブルダンサーが出ずっぱりで踊りまくる仕様なんですね。

演出や振付等々に「シルク・ド・ソレイユ」のスタッフが絡んでいるそうで、舞台空間の天地もフル使用のアクロバティックなパートもありで、動きが多彩。

歌のバックダンサー的なところもあれば、背景、時には心理描写もあり。

さらに主要キャストの一人、三銃士のアトス(ブラヒム・ザイバ)がヒップホップ・ダンサーとしては非常に有名な方なのだそうですが、いわゆるミュージカル畑とは違うところから来た人が配されていることから、踊りで情景、あるいは心理を語るシーンもありです。

というか、むしろ今思えば「言葉」は極力排除しようという意向すら見えました。

そういう意味では確かに「ミュージカル」に「シルク・ド・ソレイユ」を混ぜた「ダンシング・ミュージカル」ですし、アンサンブルに特別フィジカルの強い特別な方々がいないと成り立たない舞台でしょう。

それこそ「シルク・ド・ソレイユ」のようなテクニックを学んでいないと、おいそれと簡単に輸入して移植はできないのではなかろうか?

 

その分剣術アクションは想像していたよりも少な目。

とはいえスピーディーとスローな動きを使い分けるなど、情景に応じ動きに工夫をしていましたね。

ダンスや動きから読みとるところが結構ありで、舞台で起こっている動きを余すところなく見ていくと、いろんなものが見えてくる、そんな面白さもありました。

 

●テンポよく、細かいことは気にせず

ストーリーは王道「王妃の首飾り事件」。

背景はプロジェクションマッピングをふんだん使用です。

最近このプロジェクションマッピングを使用した舞台は非常に多くて、でもどれだけ立体的に映像を見せようが、薄っぺらな感が否めず、私はあまり好きじゃないです。

効果的に使われる分にはいいのですが。

しかし今回はダンサーの動きがすさまじいですから、セットを置いたら逆に邪魔になりそうですし、これが現状ベストだったかもですね。

 

舞台展開は無駄を省いたスピーディーなもの。

英国との戦争続きで疲弊する国、そしてダルタニャンの旅立ち。

カナダのフランス語圏ケベック出身(狙った?)の歌手、オリヴィエ・ディオンがかっこいいながらもどっか田舎くさいダルタニャンにぴったりで、実にいいです。

ランニングマシーンの上を歩きながら1曲(De mes propres ailes)歌っている間にプランシェが道中仲間になり、ともにパリへ。

いいですね、テンポよくて。

 

と、鉄の網扉が何枚も降りて来て、宮殿の奥なのでしょうか。

王妃と公爵の密会……というより、いきなり別れねばならないナンバー(Tout est écrit)。

「国に危険を及ぼすわけにはいかない」と別れを告げる王妃に、それを受け入れ「何か思い出の品を」という公爵(原作では「バッキンガム公爵」として登場しますが、この舞台では単に「公爵」です)。

お約束通り首飾りを渡す王妃。

ストーリー早い!

 

王妃がおばさん臭いのに対し、公爵のゴランが小顔でめっちゃイケメンです。

ゴランはオランダ人で、その北方系の感じがまたいい味。

舞台人としてのキャリアはスカピノ・バレエ・ロッテルダムのダンサーからだったとか。

スカピノといったらコンテンポラリー・バレエで有名で、ゲッゲやフォーサイスなど有名な振付家の作品を数々踊っているところですが、やめたとはいえ、そこにいたんだ~!と思うとなんかしげしげと見てしまいますね。

そうか、彼の踊りのベースはそこか、と。

 

話を進めます。

場面が代わり王妃と公爵の密会を知る枢機卿

腹心ミレディの歌(Je suis cash)。

王妃を貶め、国の実権をより強固なものにしようとたくらむ2人です。

ロシュフォールは不在。

こういう舞台などは特に、内容に応じてはかなり扱いの難しくなる人です、ロシュフォール……(よくわかる)。

 

●フランス人のイメージするアラミス、ポルト

さらに場面転換。

パリの町をかけずり回るダルタニャン。

女性と秘密の逢い引き中のアラミスにぶつかり、KY丸出しでご婦人がアラミスにこっそり渡したハンカチを「落としましたよ、マダム」という田舎者(笑)

デフォルトです。

アラミスを怒らせ決闘の約束。

アラミスのダミアンはフレンチミュージカル「ロミオとジュリエット」の初代ロミオをやった方で、ミュージカル俳優としては大御所の一人。

ダンディでセクシーな大人の男の色気たっぷりのイケメンで、「フランス人のイメージするアラミスってこれかぁ!」と思うとニヤニヤが止まりません(笑)

さすが香水の名前になるだけある、アラミス♪

 

ポルトスはどこからどうみても肉体派の巨体がっちり系(ハンガリー出身ということだそうですが、なるほど)。

扮するダヴィッド・バンは「1789」でダントンをやっていた人だけに、なるほど感がたっぷりの、陽気で酒好きで女好きで豪快で、そして人の好さそうなポルトスです。

そこにお約束通りぶつかり「デクノボウ、突っ立ってんじゃないよ」と喧嘩を売るダル。

そして決闘のアポ(笑)

 

●なるほど的異色感のアトス

そしてアトス(ブラヒム・ザイバ)は、これまで見た様々な舞台や映画、アニメのどれをとっても相当に「異色」です。

中東系のヒップホップ・ダンサーで「三銃士」のなかで一番若い。

そして「ダンシング・ミュージカル」の「ダンシング」をもっとも体現する人ともいえます。

ミュージカル役者として舞台にいても畑違いの異質な雰囲気で、初見、2回目は疑問符もかなりあったのですが、3回目でかなりストンと来ました。

いわばブラヒム独特の異色っぷりが、原作アトスの「貴族」「(良くも悪くも)ボンボン」というキャラに非常に合っているわけです、これを狙ったのかどうかはともかく。

 

つまり「アトス」というキャラは、そもそも異色なんですね、「三銃士」のなかでは。

原作はもとより実際の「三銃士」の時代、ほとんどの銃士が南フランスはガスコーニュの気骨も荒々しい粗野な田舎者の中にあって、北仏の「貴族」出身のアトスは相当に異質だったのは想像に難くありません。

それこそ「コーラを飲んだらゲップがでる」くらい(笑)階級序列が当たり前の時代に、(どんなに世を拗ねてやさぐれようが)「貴族」の雰囲気を漂わせるアトスはリーダーになるのは自然だったでしょうし、自身もそこに疑問は感じなかったでしょう。

生まれついての「統べる階級」貴族が身に染みついているんでしょうから。

「貴族の理由で」(勝手に)傷つき、自身は「燃えないゴミです」とも言わんばかりに世を拗ねるわりには銃士のリーダーに収まる、その辺りの理由はそこかと。

 

「ダンシング・ミュージカル」の舞台にあって、ダンシング銃士のリーダー然として振る舞う若きブラヒム演じるアトスを見ていると、なんだかその証明、具現化を目の当たりにしているような気分でした。

この辺りでもう膝バシバシです。

この「三銃士」に出会ってもう何年も経ちますが、今回ほど長年のモヤモヤをスッキリ感じたことはありません。

いやもう、これだけでこのミュージカルは価値があるってもんです。

 

そしてそのアトスにダルはお約束通り喧嘩を売り、舞台は一気に決闘と思いきや、そのままジュサック率いる親衛隊との乱闘。

親衛隊の衣装がコマンドーです(笑)

 

親衛隊を蹴散らし、「すごいぞ!ダルタニャン」で一気に仲間に。

いやだって、オリヴィエ・ディオン渾身の飛び蹴りですもんw

ジュサックもよく壊れないもんです。

そして群衆のコンスタンスと視線と視線を交わしただけで恋に落ちるイージースピーディー展開です。

 

そして恋するコンスタンスのナンバー(Et si c'était lui)ですが、このとき後ろで踊る筋肉ダンスだけは何度見てもいただけませんでした。

なんでこれ??

疑問符しか付かないですね、これだけは何回見ても謎(てか気持ち悪いわ)。

 

●燃え上がる過去の因縁

狩りの大好きなルイ13世にダルを引き合わせる三銃士。

王様は枢機卿に任せておけば国は安泰、より強国になる、と仰られる。

「傀儡王」のポジションです。

 

その枢機卿、戦の口実と王妃を陥れるため首飾りを付けて舞踏会に出てくるように、と告げます。

「フランスを裏切ろうとしているのではありませんか?」という枢機卿に、全身全霊で「ノー!」と拒絶する王妃。

フランスの王妃でありながらも恋を秘め、また公爵の身を案じる王妃のナンバー(Face à face)。

夢想に現れる公爵、いい身体されていて、まあセクシーです。

 

しかし首飾りを取り戻さねばならない。

侍女のコンスタンス「私に考えがあります」と銃士の詰所へ。

 

銃士隊の詰め所ではアトス主導での剣のレッスンから、ダルタニャンが夢を語る陽気なナンバー(Je t'aime c'est tout)。

そこへコンスタンスが現れ、ダルタニャンに秘密のミッションを告げます。

当然密命を受け、出発前にやるべきことはやるらしい2人は退場(笑)

残った銃士、ポルトスのギターでアラミスが歌います(J'ai besoin d'amour comme tout le monde)。

踊りのメインはアトス。

ポルトスが弾きアラミスが歌い、アトスが踊る。

こういう「三銃士」なんですね、いいです、楽しいです。

 

そして三銃士+ダルタニャンがロンドンへ向かうという情報を得て、断固阻止を誓うミレディの憎しみ炸裂の、炎のナンバー(Rendez-vous En Enfer)。

リアルに炎が噴出し、フィジカルダンサーズに翻弄され奈落へ落とされるアトスの踊りが加わるすごい演出です(前の方で見ていたら本当に炎の熱気がすごくて暑い!)。

どうしたってミレディとアトスの過去、因縁を観客に起想させます。

つか、ここまで端折ってスピーディー展開しながらも、アトスとミレディの過去は語るのか、端折らず詰め込んでくるんだ、これを!!

 

そして踊りやマイムは時には言葉など及びもつかないほどに雄弁で、こちらの想像(妄想)を刺激して溢れまくります。

わずか6分ほどのナンバーに、とんでもない情報量を詰め込んできます。

まさにダンシング・ミュージカル。

2人の複雑な過去の因縁を、歌と踊りでイメージさせて、実に濃厚に第一部終演です。

非常にアップテンポながらも、必要なことがほとんど語られました。

第二部は回収に入ります。

 

長くなりましたので続きは次回に。

 

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